小売における「顧客感動」や「満足から感動へ」とは

川島:それにしても、ファッション業界に元気がないことが気になります。

新井:日本のファッション業界の現状を見れば、外からモノを入れてくる時代でないのは自明の理です。海外の製品を買いつけて売る、あるいはそれなりのブランドのものを解体して少しだけ手を加え、アジアの工場で作るなど、日本のファッション企業がとっている手法は、安易過ぎるのではと思っています。
あるいは、海外で買い付けするにあたって、それらを、どの時期に、どの店で、どういう風に売るのか、そこまで考えているバイヤーが驚くほど少ない。周到な準備をしなくても売れた時代が、かつてあったのかもしれませんが、もう成り立たなくなっています。危機的状況にあるのに、なぜ以前と同じ売り方ややり方を続けているのか、どうして放置して目をつぶっているのか、私にはひとつも理解できません。

川島:大量にある商品の中から、価格や機能で選ぶのであれば、ネットの方が圧倒的に優位なわけで、そこにこそ小売が果たす役割があるということですね。

新井:そうです。小売の現場では「顧客感動」や「満足から感動へ」といった言葉がよく使われますが、本当に感動する価値を提供できなければ、人が集まったり、顧客が生まれたりしません。ましてルミネという企業への信頼にはつながっていきません。買い手が感動する価値を提供することにこそ知恵を結集して、力を尽くさなければなりません。

現場でのやりとりこそがファンを作る

川島:逆に言えば、そこができていくと、ファンがついてくるということですか。

新井:作り手の方々の思いを含めたモノ作りの背景と、お客様が潜在的に持っているニーズをつなぐのは、やはりリアルな場でのお客様とのやりとりなんです。そしてお客様自身が、お店でのコミュニケーションを通して、「この人といろいろしゃべったことで豊かな時間を過ごせた」と感じてくだされば、結果として需要を生んでいくわけです。ただ、言うは易く行うは難しで、一朝一夕にできることでもありません。だからこそ、日々のたゆまぬ前進と変化を敏感に感じ取ることが必要なのです。

川島:「おもてなし」もそうですが、マーケティングの世界で安易に使っている言葉も、現場で実践し、成果を出すのは、そう簡単ではないですね。

(第2回に続く)