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「断捨離」なんかつまんないからやめちゃえ!

<b>都築響一</b><br/ >1956年、東京生まれ。76年から86年まで『ポパイ』、『ブルータス』で現代美術や建築、デザインなどの記事を担当。89年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行した。自らカメラを手に、狭いながらも独創的な東京人の暮らしを撮影した『TOKYO STYLE』や、日本全国の奇妙な名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』で、既存メディアが見たことのない視点から現代社会を切り取る。97年に第23回・木村伊兵衛賞を受賞。97年から2001年にかけて、アマチュアの優れたデザインを集めた写真集『ストリート・デザイン・ファイル』全20巻を刊行。その後も現在に至るまで、秘宝館やスナック、独居老人など、無名の超人たちに光を当て、世界中のロードサイドを巡る取材を続行中。(写真:大槻純一)
都築響一
1956年、東京生まれ。76年から86年まで『ポパイ』、『ブルータス』で現代美術や建築、デザインなどの記事を担当。89年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行した。自らカメラを手に、狭いながらも独創的な東京人の暮らしを撮影した『TOKYO STYLE』や、日本全国の奇妙な名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』で、既存メディアが見たことのない視点から現代社会を切り取る。97年に第23回・木村伊兵衛賞を受賞。97年から2001年にかけて、アマチュアの優れたデザインを集めた写真集『ストリート・デザイン・ファイル』全20巻を刊行。その後も現在に至るまで、秘宝館やスナック、独居老人など、無名の超人たちに光を当て、世界中のロードサイドを巡る取材を続行中。(写真:大槻純一)

川島:前回は、都築流の「かっこいい」って何かをうかがいました。「かっこいい」ものを買って揃えることは、必ずしもかっこよくない。それよりむしろ、大企業が販売している大量生産品を「ベース」にして、使い手が好きにカスタマイズしていく方がよっぽど「かっこいい」と。

都築:普通の人や若い人はお金ないですから。だったら、工夫すればいいんですよ。

川島:前回も触れた都築さんの著書『TOKYO STYLE』では、おしゃれなインテリア雑誌には絶対に出てこない世界、若い人たちが狭い部屋を自分の趣味でカスタマイズして、コックピットみたいにして暮らしている様をどーんと出しました。あれ見ると、逆に雑誌のインテリア特集を見ていて、かっこいいけど、こんな空間、もし住んだら息が詰まっちゃう、と思っちゃったり。

都築:でしょ。マスコミが提案しているものは、実はマスじゃないってことです。雑誌に出てくるかっこいい部屋なんかに住んでいる人、実際にはほとんどいないわけだから。

川島:リアルなマスは、シンプルに整理整頓されたライフスタイルではなくて、『TOKYO STYLE』に登場してくるような、ワンルームマンションやアパートの一室に、自分の好きなものに囲まれて暮らしている方。なのに、そっちは「かっこ悪い」とレッテルを貼ってメディアは取り上げない。

都築:そう、考えてみたら当たり前なんだけど、僕自身、実際に『TOKYO STYLE』を作りながら、改めて気づかされた。だから最近、話題を集めている「断捨離」みたいなこと、僕に言わせれば、一番つまらないですよ。

川島:なぜですか?

都築:持っているものをなるべく減らそう、捨てちゃおう、というのは、ここのところずっと流行っていますよね。「断捨離」とか「捨てる技術」とか「片付けの魔法」とか。でも、逆に言えば、そもそも、捨てられるものしか持ってないってことじゃないですか。つまり、「断捨離」ができちゃうってことは、人生を楽しんでいないことですよ。

川島:確かに。一方で、雑誌でも書籍でも「物は持たずにシンプルに」っていうのが流行りですよね。洋服だって、「本当に必要なものだけに絞っておしゃれに着こなそう」みたいな。フランス人は10着しか服持ってないとか(笑)

都築:そんなわけないでしょ(笑) ものを減らせる人っていうのも、やはり少数派だと思いますよ。人生を楽しんでいたら、好きなものがたまっちゃって捨てるに捨てられなくなっている。部屋は片付かないけど、けっこうハッピー。そっちがマスですよ。これもマスコミは取り上げないけど。

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