高給取りに限って文句が多い

川島:確かに会議に出ているだけで、かえってプロとして責任範囲が曖昧になるってことありますね。「企画が会議を通らない」とか「上司に理解がない」っていう話、大企業の人と話しているとよく聞かされるんです。それで、「仕事、面白くないです」って愚痴になる。都築さん、どうしたら仕事は「面白く」できるのでしょうか?

都築:えーと、僕だったら、まず本当に自分が「好き」で面白がった企画なのかどうか、を考えますね。それで、どうしてもその企画がやりたかったら、とにかくやっちゃえ、です。会社で通らなかったら、会社を辞めて他でやればいい。

川島:えーと、そこまで思いきれない、つまり辞められない場合は。

都築:仕事で「面白い」を諦めて大企業のサラリーマンをやってればいいんです。だいたい大企業に勤めているっていうのは給料がいいわけでしょ。給料がよくって、その上、仕事も面白くしたい、なんて強欲すぎますよ。面白いことを自由にやるっていうのは、いろんなリスクを背負っているわけだから。たくさんの人が勤めていて給料も高い大企業の仕事が、「面白くない」のは宿命みたいなもの。美味しいとこ取りはないですよ(笑)

川島:うーん。そうですね。そう言われると何も言い返せない……。

都築:高給取りに限って文句が多いんです。「仕事がつまらん」とか「やりがいがない」とか。給料高いからいいじゃん。面白いことは仕事以外で見つければいいのよ、そういう人は。

 仕事が好きでやってるケースを紹介すると、たとえばこのジャンルが飯より「好き」っていう人が少人数で作っている専門誌って、めちぇめちゃ面白いわけです。トラックを満艦飾みたいに飾るデコトラの雑誌とか、見たことありますか。これがもう、ものすごく面白い。それはどういうことかと言うと、「好き」なことが決まっていて、編集部の各自が「好き」にやっているからだと思うんです。アイドル雑誌なんかも、仕事はきついは給料は安いはで超過酷な現場だけど、編集部の誰も文句言ってない。アイドル大好き!が根っこにあるから。

三菱地所相手に「企画書」なしで丸ビル唯一のスナック作りました

川島:都築さんは、編集というお仕事の他にお店を作ったりもしています。90年代に一世を風靡したディスコ「GOLD」もそうだったし、新丸ビルの中の「スナック来夢来人」もそうですね。

都築:どれも新しい本を作る時と同じです。「こういうお店が欲しい→なのにない→しょうがないから自分で作ろう」というところから始まったもの。

川島:ほんとだ。お店を作る時も「しょうがない」が出発点なんですね。

都築:その意味では、取材して原稿を書いたり、本を作ったりするのと同じ理由なんですよ。やり方もいっしょ。たとえば芝浦の「GOLD」や恵比寿の「MILK」みたいなクラブを作った時、コンセプトはもちろん考えるけど、いわゆるマーケットリサーチとかは1回もしない。「企画書」というものも書いたことがないんです。

川島:えー! それでよく企画が通りますね。どうやってお店を作っているんですか。

都築:まず、「僕はこんな感じの店にしたい」と関係者に説明をするわけです。「GOLD」の時は、建築家に説明するために、超短編小説みたいなものを書いたんです。背景にはこういう町があって、入っていくと音が鳴り響いている空間でみたいな話を。それを建築家に渡したんです。

川島:なんだ、何も書かないかと思ったら、パワーポイントで企画書を書くよりも、はるかに手間をかけているじゃないですか! 建築家にしてみたら、無味乾燥な企画書に文字や図がびっしり書いてあるより、都築さんの描いた短編小説の方が、空間イメージがつかめるんでしょうね。新丸ビルに女性客限定の「スナック来夢来人」を作ったときも、企画書はなかったんですか?