ブランドとは「人が対価を払うラベル」
川島:この連載では、必ずブランドの定義をお願いしています。田中さんにとってブランドとは、どういう意味を持っているのでしょうか。
田中:そうですね。一言で言えば、ブランドとは「人が対価を払うラベル」ではないでしょうか。たとえば、無地のカップに入っているコーヒーと、「スターバックス」のマークが入っているカップに入っているコーヒーでは、人が払う対価は違ってきます。
川島:その違いは、何に拠るのでしょうか。
田中:企業のフィロソフィーや歴史といったストーリーが、ブランドとして認知されているかどうかだと思うのです。ですから、ブランドとは、意図的に作るものでなく、あくまで結果なのです。
川島:結果ということは、最初からブランドを声高に謳うものではないと?
田中:様々な企業活動を積み重ねていった結果が、ブランドに行き着くという風に、私は考えています。だから一気呵成に作れるものではないし、できるものでもないのです。
川島:ということは、ブランドにはゴールがないということですね。では田中さん、ジンズというブランドには、どうなって欲しいと考えていますか。
田中:高級な素材を使って高価なものを作るとか、大量生産することで安価なものを作るといったところでブランドになるのではなく、ジンズがあったからこういうライフスタイルが生まれたというような、何か新しい体験、新しい価値を生み出すブランドであり続けたい、そのようになって行きたいと考えています。
川島:だからジンズは、次々と新しいことに挑戦しているのですね。
田中:多くの方が、今のジンズはメガネ屋さんと思っているのでしょうが、私は“メガネの販売”というビジネスそのものから脱却することも十分あり得ると考えています。今後、AIやロボティクス、IoTなどが、どんどん広がっていく中で、メガネそのものの意味や価値が問われていくことは間違いありません。一方で、「見る」という行為の未来には、様々な可能性があるし、ウェアラブルという点において、メガネが持っているポテンシャルは高いと考えているのです。
川島:他社とのコラボレーションでビジネスが広がっていく可能性も考えていますか?「Think Lab」には、様々なオフィス家具メーカーのデスクや椅子、食品メーカーや飲料メーカーの商品なども置いてありました。ライバル企業同士の製品もあったようです。


田中:「Think Lab」に興味を持っていただいたメーカーが、自社製品の実験も含めて参画してくれているのです。これからは他の企業とも連携し、一緒に新しい体験、新しい価値を生み出していこうと考えています。
川島:ジンズの未来がますます広がっていきそうだし、何よりそれを語っている田中さんが楽しそうなのがいいところです。

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