人間が成長しなかったら事業も成長しない

川島:田中さんはワンマンで、圧倒的にトップダウンというイメージがありますが。

田中:おっしゃる通り、昔はトップダウンでした(笑) 24歳で起業し、20代後半には利益を出す会社になっていて、思い起こしてみると、「社員は全員、自分の言うことだけ聞いていればいい」というような姿勢が、どこかにあったと思います。

川島:やっぱりワンマンだったのですね。

田中:そうですね。でも、そうやっていい気になっているうちに、業績が悪くなってきて、何とか挽回しなければならなくなった。その時、ワンマンな私だけではどうすることもできず、一緒に考えてくれる社員が大きな助けになったのです。以来、ワンマンだけではやれないと、自分を戒めてきました。

川島:いい話です。

田中:そう思うと、仕事とは、人間を成長させてくれるものとつくづく思います。人間が成長しなかったら、事業も成長しないのです。人間の成長と仕事の成長、そこが完全につながっているのが面白いとも思います。毎日の生活の中で、仕事が占めている比率は決して小さくないわけですから、そこから得られることは大きいと思います。しかもこれは、ビジネスに限らず、歌舞伎の世界やアーティストの世界も同じだと思うのです。その意味では、一生、終わりがない話でもあります。

川島:田中さんは、次から次へとやりたいことが湧いてきて、それをかたちにしていっている。そうやって新しい開拓をずっとなさっていくのでしょうね。良い意味での欲は、どこから湧いてくるのかと思っちゃいます。

田中:いや、風圧が物凄く強いのです。

川島:トップとして企業を率い、まさに先頭を切って進むわけですから、風あたりが強いのはわかります。だけど、それに負けない魅力があるから、引き受けて前に進んでいくのですよね。なぜなのでしょうか?

田中:うーん、恐らく“違う景色”を見たいのです。

川島:“違う景色”ですか?

田中:ちょうど山を登っていく感じで、拓けていく景色を見たいという欲望が強いのです。これをやり遂げたら、周囲の景色がどう変わるだろう? 何が見えてくるだろうと想像すると、どうしてもチャレンジしたくなってしまうのです。だから反対に、同じ景色をずっと見ているのは苦手かもしれません。飽きてしまうし、つまらないではないですか。

川島:それにしても、前進し続けるパワーが凄いから、山を登り続けているうちに、酸素が足りなくなって息切れしないのかと、少し心配になっちゃいます。

(次回は最終回。大学院での経験や田中社長のブランドに対する考えを聞いていきます)