「正しい正しくない」より「好き嫌い」

川島:経営トップの多くは、社員に対して「積極的な姿勢でイノベーションを起こして欲しい」というものですが、実際のところは、新しいことやイノベーティブなことに対し、「本当に成功するのか」といったネガティブな声が出てくるものです。

田中:だからこそ、私は社員に「オネスト」「インスパイアリング」「プログレッシブ」を大事にして欲しいと思っているのです。たとえば、今、川島さんがおっしゃった新しい提案に対するネガティブな声は、言い出した人自身の、人となりに拠ることもあるかもしれません。信頼を得られない人が「何かやろう」と言っても、周りは賛同したり協力はしないですよね。逆に、信頼できる人が、何か新しいことを本当にやりたいと言った時には、自ずと協力者が出てくるし、チームを作って互いに影響を与え合えば、何かイノベーティブなことが起きていくと考えているのです。その意味では、トップダウンではなく、ボトムアップできるかどうかも大事です。ボトムアップした上でトップダウンでもいいのですが、それをやらずにトップダウンだけをしてしまうと、現場は結構反発することもあります。だから私は、「ボトムアップしやすい環境で、かつ、最終決断はトップダウン」という形がとれれば、会社は良い方向に向かっていくと思うのです。

川島:組織に属していると、そこって大事だと思います。トップダウンだけで、いきなり押し付けられてもというのもあるし、頭で理解しても感情が動かないというか。

田中:川島さん、人間とは利より感情で動くものなのです。

川島:利より感情とは、どういうことですか。

田中:人間は感情の生き物ということです。正しいか正しくないかよりは、好き嫌いで動くもの。私はそうとらえているのです。ただ、組織を率いていて思うのは、好き嫌いだけで仕事するのではなく、嫌いな人を好きにさせる、嫌いな人をも仲間にする人、できれば社員にもそうなって欲しいということです。

川島:田中さん自身は、そのあたり、どうなさっているのですか?

田中:チャレンジしています。私も含めてですが、自分の視点でしか見ていないのです。それは“食わず嫌い”と似ているところがあって、食べてみたら意外と好きだった、嫌いではなかったということ、あるじゃないですか。だから私は、嫌いと思った時に、自分の魂を向こう側に置いてみる。そうすると、新しい見方ができて、相手のことが少し理解できるのです。

川島:それって仕事に限らず、人としての生き方に触れる話ですね。

田中:私の中では、仕事もプライベートも、あらゆることが一緒な気がしているのです。

川島:その視点では、ワークライフバランスとか働き方改革ということも難しい課題です。

田中:これからの働き方をどうしていくかについても、日本人は真面目過ぎるところがあるのではないでしょうか。本当にやりたいことをやっていないのではと感じること、たくさんあります。

川島:たとえば?

田中:たとえばですが、会社や仕事があまり好きでなくても、給料はそれなりで、高い倍率をくぐり抜けて入った優良企業だし、周囲から良い会社に勤めていると言われるから、その会社に居続ける人もいます。ただそれは、他人からの評価であって、自分が本当にやりたいことをやっていないと思うのです。そのあたり、もう少し自分に素直になってもいいのではないでしょうか。

川島:田中さんにそう言われると、何だか気持ちが楽になります(笑)

(第3回は田中社長が考える働き方について、川島さんが迫ります)