儲かるかどうかの判断は、信じるかどうかに拠る

川島:“そこそこ”という意気込みだと、“まあまあ”の成果は出たとしても想定内で終わってしまう。想定外の発見はないということですね。

田中:そうです。想定内で終わるということは、何のデザインもされていないということです。

川島:そこでいうデザインとは、どういう意味ですか。

田中:「ビジネスはデザインすること」と、私はとらえています。つまりデザインとは、「かっこいい」とか「かっこ悪い」ということではなくて、何か課題を解決すること。社会の中、一人の人の中、それぞれが抱えている課題があるじゃないですか。それを解決していくことがデザインであり、実現するには振り切ってみる必要があると思っています。

川島:振り切ってみた「Think Lab」の反響はどうですか?

田中:さまざまな企業の総務や人事担当の方をはじめ、政治家や官公庁の方も含め、毎週200名ほどの方が見学に訪れています。いわゆる働き方改革の推進や、社員の生産性を高めていく方法を模索しているところが大半で、何らかのヒントを求めているようです。

川島:そんなに多くの人が興味を持っているのであれば、即、ビジネスになりそうです。

田中:具体的なビジネスの話も、既に出てきています。

川島:一体どんなことですか?

田中:会社の中に「Think Lab」を作ってくれないかということをはじめ、様々なお話があります。

川島:それで田中さん、「Think Lab」のように、何かやってみようと振り切ってみた、感触は悪くない、次に何かやれそうだ。そこで次に進むかどうかを、社長としてどう判断されるのですか。

田中:ここまで反応があると「やる」という判断に行きます。

川島:「やらない」という判断をするのは、どういう時なのですか。

田中:儲からないと思った時です。ビジネスですから、儲からないことは絶対にやりません。ただ、儲かるか儲からないかの判断は、信じるか信じないかということでもあるのです。

川島:えっ、それはどういうことですか?

田中:「儲かる」とは「信じる」「者」と書くじゃないですか。つまり私にとって、儲かるか儲からないかは、それを信じられるか信じられないかということなのです。結局、最終決断をくだすのが、社長としての私の役割ですから。

川島:企業の中でよくあるのは、上司から「その提案を成功させるには、はたしてどれくらいのニーズがあるのか、どれくらいの利益を上げられるのか、定量的な裏づけが必要」と言われることです。それで、膨大な調査や資料を作り、会議にかけられてボツ。あるいは「説得力にかける」ということでストップがかかったという話も、よく耳にします。でも、田中さんの判断基準を聞いていると、定量的な物差しというより、ある種の「勘」みたいなものを大事にしていると感じました。

田中:定量的な物差しだけで判断することを、私は良しとしていません。過去を振り返ってみると、定量的な根拠なしで、周囲が反対ということが、結果的に成功しているケースが圧倒的に多いのです。メガネ事業を始める時も、「JINS PC」を発表する時もそうでした。逆に、周囲の皆が大賛成ということが、大きな成功を遂げた事例はほとんどないと言っていいかもしれません。

川島:大半の経営者は、そういう風におっしゃるのですが、本当かなあと(笑) 次回は、その成功と失敗について聞いてみたいと思います。