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川島:この質問、連載で必ず聞いていることなんですが、糸井さんにとって「ブランド」とは何ですか?

1948年群馬県生まれ。「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰。 1971年にコピーライターとしてデビュー。 「不思議、大好き。」「おいしい生活。」などの広告で一躍有名に。 また、作詞やエッセイ執筆、ゲーム制作など、幅広いジャンルでも活躍。 1998年6月に毎日更新のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を 立ち上げてからは、同サイトでの活動に全力を傾けている。

糸井:よく分からないんですけど、まあ一言で言えば、経営してきた人のヒストリーですよね。きちんとしたヒストリーさえあれば、「5年しか経っていないけれどブランド」っていうのもあると思うんです。

 「iPhone」だって、アップルというブランドに乗っかっているとはいえ、ブランドとして一本立ちできる存在になっている。それはやっぱり、「iPhone」の持っているヒストリーだと思うんです。そして、ヒストリーというのは「ライフの集合体」でもある。

川島:「ライフの集合体」ですか?

糸井:「ほぼ日手帳」について言えば、もう10年以上にわたって「手帳って何か」ということを、僕らは考えているわけです。東日本大震災があった時、手帳が流れてしまった人に、新しい手帳を差し上げますということをしてみたら、ものすごく喜ばれたんです。

 アルバムを失くしちゃったということと、手帳を失くしちゃったということを、同じように大事にとらえている人たちが、実はいっぱいいたわけです。それで「これは何だろう」って考えた時に、その人たちにとっての手帳って、生命=ライフの一部みたいになっているのかもしれないと思ったんです。

川島:そう言われてみると、使い終わった手帳って、何に使うわけでもないのに捨てられなくて。20年間分くらい手元にあります。

糸井:そうでしょう。それで一昨年、「ほぼ日手帳」に「LIFEのBOOK」というキャッチフレーズを付けてみたんです。そうしたら、いろいろなものが見えてきて、昨年(2015年)は「This is my life.」 というキャッチフレーズにしたんです。

 「手帳ってライフだよ」って言うと、すごく収まるわけです。川島さんのように、何年もとっておいて後で見るのもライフだし、もう終わったことと捨ててしまうのもライフ。そういった無数のライフの積み重ねって、ブランドとそっくりだと思うんです。

川島:なるほど。使ってきた人のストーリーも含めて「ライフの集合体」となったもの、それがブランドということですね。じゃあ、そんな「ライフの集合体」、つまりブランドは意図的に作れるのでしょうか。

老舗にとって、新しい挑戦とは新しくなることじゃない

糸井:あるブランドについて「大好き」という人がいてもいいし、「認めません」という人がいてもいい。それから、「うちは、なかなか手が出せない存在」というヒストリーをキープしようとしているブランドに対して、「いつかは憧れ」という人がいるのもありです。

川島:いわゆるラグジュアリーブランドって、そういう「ライフの集合体」と言えますね。

糸井:一方で「絶対そんなもの身に着けない」というひとがいるのも、それはそれで当たり前のことです。

川島:「ライフの集合体」だから、いろいろなありようがあるわけですね。

糸井:たとえば「金儲けだ、金儲けだ」と言っている人が集まって、ものすごく一所懸命やりましたっていう「ライフの集合体=ブランド」もある。それは、「金儲けだ!という人が作った」というヒストリーで、ある層の人を惹きつける。ファンを作れますよね。

川島 だから人は、ブランドのものを手に入れて、使うわけですね。