川島:次なる名店ランキング1位に行けばいいわけです。

糸井:たとえば、昔から常連さんが大事にしているような料亭があって、でも時代が変わって「もうあそこはやっていけないんですよ」という時に、どうやって助けるかなんて考えるよりは、「あそこはもう古いね」と言って、カロリーたっぷりで「ま、そこそこ高いけれど、やっぱうまいよね」という新しい料理屋さんに移っていく。

川島:うーん、なんとなく顔が浮かぶけど、「羽振りの良い人」たち、ちょっと罪深いなあ。

糸井:そこはちょっと違うんです。いつだって、「ちょっと下品でお金を持っている」人が次の時代を作るんです。つまり「良くないけど力がある」。「ちょっと嫌だけれどパワーはある」。その力を否定しちゃダメなんです。

川島:そうですか……。

糸井:そういう「良くないけど力のある」というのを仕事の研究の対象にしなかったら、薄味の古典的な料理屋さんワールドに閉じこもったままになっちゃう。

川島:それは滅びの道ですね。じゃあ、糸井さん、ちょっと嫌だけれど研究対象の方たちとも付き合うんですね。

糸井:苦手なんだなぁ、これが(笑)。その場合、そういう「羽振りの良い人」が持っている価値観の源泉って何なんだろうなということを考えて、源泉の方を勉強することにしています。

川島:その源泉ってたとえば?

矢沢永吉が源泉だった

糸井:ざっくり言うと、永ちゃんなんです。かつて矢沢永吉は、デビューまもない頃に「近所にタバコを買いに行く時も、キャデラックに乗っていく」と言い放ちました。

川島:そして糸井さんと作った自伝のタイトルが『成りあがり』。一貫している! そうそう、矢沢さんは、まさに「羽振りの良さ」をどーんと見せるってところから出てきて、自ら「成りあがり」と言ってるけど、「かっこいい」「ダサい」でいうと、やっぱり「かっこいい」んですよね。

糸井:永ちゃんは、まさに「羽振りの良さってこういうことだぜ」というのを世間に見せつけてきました。それまで誰も見せてなかった価値感を提示した人なわけです。その後、成りあがって「羽振りの良い人」たちがやりたがることは、永ちゃんが、かつて示した道をたどっていると思うんです。

 いい外車に乗って、隣には足の長い綺麗なお姉さんがいて、周りにほめられて、六本木を制する。とても簡単でわかりやすい要素です。そういう「羽振りの良さ」が古いものを淘汰し、新しいものを作っていく部分が確かにあるんですよね。

川島:「ちょっと下品でお金を持っている」という人たちが、歴史を作ってきた。どんな名家だって最初は「成りあがり」です。

糸井:いつでも次の時代の礎になったようなものって、前の時代の人からは、ちょっと下品に見えて、なおかつ金だけでやっているように見えたりもする。それを、はすに構えて軽蔑するというのは、単なるスノビズムで力がない。人はそういうものだ、歴史はそういうものだ、と受け止めなくてはいけませんよね。

川島:じゃあ、糸井さんも「羽振り良く」行くんですか?

糸井:それができないんだよなあ。そもそもそんなに「羽振り良く」ないですし(笑)

*3月18日公開「ブランドは『ライフの集合体』」に続く