川島:心地よいゆるさ、たゆたっている感じがかっこいいっていうのが、糸井さんの中にあるんですね。

糸井:でも、「たゆとうている」というのは、物凄く疲れるんです。僕には、それをやれるだけの技量がない。

川島:糸井さんにとって、どういう状況がベストなんですか?

糸井:「これについて一所懸命やるか」とか、「これは頼まれたことだし、よーし」とかっていうのと、「どこ行くのかなー」っていうのと、しょっちゅう思い返しては繰り返しています。

川島:「よーし」だけも良くないし、「どこ行くのかなー」だけも良くないということですね。

糸井:良くないでしょう。筋肉がなまっちゃうしね(笑)。

ちょっと下品で羽振りがよくって肉好きな人が時代を作る

川島:糸井さんの中では、「よーし!」って思えるものとそうじゃないものってあるわけですよね。

糸井:ありますねえ。それで「良い」と思わなかった場合、なぜだろうとやっぱり自分で考えたい。「良くないけれど力がある」というものもありますから。だいたい世の中ががらっと変わる時というのは、「良くないけれど力がある」ものが出てくるんですよ。

川島:えっ、どういうことですか?

糸井:「食べ物」で言えば、古典的においしいものを出している料理屋さんは、今、淘汰されつつあるんです。「うまいもの」店ランキングを作っている世界で、「金はあるんだけれど、何食べればいいの?」という人たちの声が大きくなっているから。そういう羽振りの良い人たちが文明を変えちゃう。

川島:どんな風に変わっちゃうんですか?

糸井:「羽振りの良い人」たちは、ランキングの上位にあるという評判を耳にして、そのお店にやってきて、「うまいね、毎日来るから貸し切りにできないの」となる。貸し切りにした時に、上等な昆布でとったダシは通じないし、ご飯を食べ終わって「ごちそうさまでした」の後、「今日は肉がなかったんですね」と言っちゃう(笑)。肉にしても「但馬牛だよ」「A5」だよ、と言ったらそれだけで、点数が20点加算されちゃう(笑)。

川島:そして店の味は濃くなって、お店のメニューも変わっていっちゃう。

糸井:お店が「変わっていっちゃう」というより、お店を羽振りのいいひとたちが「変えちゃう」んです。

川島:そうやって、いいお店がダメになっていくんですね。

糸井:それが「ダメになる」ことかどうかはわかりません。が、「変わらない」お店は淘汰されてしまいます。それでも、「羽振りの良い人」たちは、ちっとも困らない。どうしてかといったら、自分の次の居場所を作っていけるからです。