川島:勘、というとなんだか当てずっぽうみたいに聞こえますが、むしろ事実に基づいたもの、底に流れているものに、ちゃんと気を回せるかどうか、なんですね。じゃあ、どうすれば勘を働かせることができるんでしょう?
糸井:この要素が大事ということを、ちょこちょこ「チェックしない」ことです。
川島:チェックしない! 禅問答だ……。
糸井:ちょこちょこチェックしちゃうと、それが目的になっちゃう。すると、もう「勘」じゃなくなっちゃう。
川島:大きなところから見てみるとか、小さなところから見てみるとか、「全体の中でここの要素が大事」に気がつくことなんでしょうね。私は、直球勝負しかできなくって、変化球が投げられないんです。だから勘が働く人、変化球が使える人に憧れちゃいます。
糸井:川島さん、直球って変化球なんです。
川島:え?
糸井:ものは投げたら放物線を描いて落ちます。普通に真っ直ぐ投げたら、軌跡は坂道のように地面の方へと下がっていきます。だから、バッターから見て、真っ直ぐやってくる球というのは、微妙に上振れしていなくてはならない。つまり落ちないように上に変化している。だから直球は変化球なんです。速球にして変化球だから、直球は、実は一番、難しい技でもある。
川島:言われてみればそうですね。
糸井:だから、川島さんも、ちゃんと変化球を投げてるんですよ。
社長は「いい方向」を見つける仕事
川島:糸井さんが社長を務めている糸井重里事務所、いま何人くらいいらっしゃるのですか?
糸井:社員が50人くらい、アルバイトも入れると70 人くらいいます。
川島:思ったよりずっと多い。その中で女性はどれくらいの割合で?
糸井:おおよそ6割から7割くらいの間ですが、空気的には9割くらいの感じです(笑)。ここにいると、みんな女性になっていくみたいなんです。
川島:賢い女性が、活き活きやっている感じ、伝わってきます。糸井さん、社長業ってどうですか?
糸井:社長に求められているのは、元気で、何だか楽しそうで、給料の遅配をしないこと。それから、来年はもっといいかもしれないと思わせてあげることです。
川島:その実現に向けて、糸井さんはどんなことをやっているのですか?
糸井:社長業は、絵描きが絵筆を持つのと同じことだと思うんです。会社というものを工作しているような感じで、「ここはカンカンカンと削っていこう」とか、「ここは型にはめなくちゃ」とか、「ここはブロックみたいだからみんなで組み立てようよ」とか、時には、材料や部品が足りないから、よそから買ってこなきゃならないってこともあるわけです。つまりは、いろいろな手法を混ぜた彫刻を作っているような仕事です。
川島:仕事や会社ってこれが完成形だ!という理想像みたいなもの、糸井さんの頭の中にあるんですか?
糸井:ないです。
川島:じゃ、ずっと作り続けていく感じですか?
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