身軽だけど、決して貧しくない暮らし

:ええ。カプセルホテルみたいですよね。もちろん、これをデザインしたチームもそのあたりはよくわかっていて、あえてこういう奇抜なデザインにしているんです。

 実はこの住居は、ライフスタイルという「物語」をまとうのが前提なんです。たとえば、スノーボードやスキーが好きな人だったら、ゲレンデに横付けして住めばいい。満天の星空が好きだったら、世界中にある原野にこの住まいを持っていけばいい。海辺が好きだったら、海岸の近くに持っていけばいい。

 そう、この家は、すぐにどこにでも持っていけるんです。それが大きなポイントなんです。

 これまでの「ラグジュアリーな生活」のありかたって、ベッドルームが3つもあって、ホームシアターがあって、プールもあって、広い庭があって、と、要するに「大きな家」がいちばんえらい、ってことになっているじゃないですか。

 でもそれってもう古い価値観で、21世紀の眼鏡で視てみたら「20世紀の人たちは、土地に縛り付けられて生きていたらしい」ってことになるかもしれない。大枚はたいて長期間のローンを組んで土地をおさえて、大きな家を建てるお金があるんだったら、世界のあちこちを巡って暮らしてみる。極端な言い方をすれば「世界がリビング」みたいに考えた方が、よっぽど豊かだと思うのです。そんな住み方に、例えばこのミニマルな住宅はぴったりなんです。

川島:そう言われてみると、この未来の家、ハイテクなキャンピングカーみたいですね。ただ、持てるものが物凄く少なくなってしまいますね。

:我が家でも、引越しの際に改めて気づいたのですが、、ほとんど使わないものがたくさんあって、それをマンションの一角に保管していたわけです。でも、1年に1度しか使わないものは、シェアリングエコノミーの発想からすれば、買うんじゃなくて、その都度借りればいい。そう考えてみると、持つものが少なくても、豊かに暮らすことはできるんですよ、今は。となると、住居のコストはもっともっと抑えられる。つまり可処分所得をキープできるんです。

 アメリカのスタートアップで、顧客の服などを普段は倉庫に保管してくれて、たとえばニューヨークのホテルで何日から何日まで宿泊するというとき、必要な衣類を倉庫からホテルに届けてセッティングしておいてくれるサービスがある。顧客はホテルに手ぶらで行けちゃう。宿泊が終わったら、部屋から引き揚げて倉庫にもどしてくれる。となると、家に服を大量に置いておく必要もなくなる。

川島:どんどん、自分の身の回りにものを持たない暮らしになっていくわけですね。

:ITの発展で、身軽になるライフスタイルへと移行できる。しかも、決して貧しくなるわけではないというところがポイントです。

*3月16日公開予定「全員が「副業」を持つ時代になります」に続く