上場企業の社長業はロボットに取って代わられる

川島:「創造=クリエイティブ」と「人づきあい=ヒューマンタッチ」の仕事は、人間が担い続ける。でも、多くのブルーカラーの仕事と、ホワイトカラーの仕事は、AIとロボットに置き換えられる。

 そうなると、疑問に思うのは、現在の企業や国家はどうなるんだろう、ということです。企業も、国家も、膨大なブルーカラーとホワイトカラーが積み重なったピラミッド型の組織ですよね。これが瓦解しちゃうんじゃないかしら?

:むしろ、トップから変わっていく可能性があります。上場企業の社長業、経営陣は、ほとんどAIに取って代わられてもおかしくない。私自身、企業経営者をずっとやってきたので実感できますが、社長の仕事の大半って、平素は下から回ってくる稟議の承認なんですよ。

川島:書類に「社長印」をバンバン押すのが仕事(笑)

:本当にそうなんです(笑)。あ、笑っちゃった。しかも、上場企業の場合は、優秀な中間管理職が配下にたくさんいるので、上げてきた書類は彼らが完璧に仕立て上げています。「これはコンプライアンスに反していないか」「はい、きちんとチェックしております」「じゃ了解」というやりとりが大半を占めちゃう。

 だったら、このような仕事はむしろAIに任せたほうが間違いがない。過去のケースなんかをすべてビッグデータ解析できるから、間違った道を選ぶ可能性を極限まで減らすことができます。欲望もないから、恣意的な決断もしない。腐敗もなくなりますよ。

川島:たしかに、AIは接待もいらないし、愛人も作らないし、賄賂もいらない。トップの犯罪が成立しなくなりますね。でも、そうなると、トップばかりではなく、中間管理職の人たちの大半の仕事も、AIに置き換えられる、ってことになりませんか。

:そうです。だから、農業文明の勃興から数千年続いてきた、巨大なピラミッド型の組織構造は、AIの台頭により、意味をなさなくなってくるんです。ピラミッドを残した組織は、それはやめた組織に勝てなくなるから、自然と崩壊していくはずです。

 社会の仕組みを20世紀モデルから21世紀モデルへ変えなきゃいけないのですが、問題は、その21世紀モデルがどんなかたちになるのか、明らかになっていないことなんですね。僕は基本的には楽観的な人間なんですけど、この社会組織の崩壊と再編に関しては、そう楽観視してはいけない気がしています。IT分野で、技術の進化を思いっきり推進してきた社会的責任があるとも感じているので、僕としては、なんらかの建設的な提案をして、少しでも役立ちたいと思っています。

川島:孫さんが考える未来では、どんなかたちに社会は再編されるんでしょう?

:まず急激な勢いで既存の仕事が減っていきます。ブルーカラーの仕事はどんどんなくなるし、ホワイトカラーの仕事も減っていく。となると、まず行政がワークシェアリングを推進すると思います。今は、原則として1日8時間労働で残業は月45時間までと決まっていますが、人々の仕事は1人あたり1日3時間とか4時間労働に減っていく。つまりこれまでは、1人がやっていた仕事を2~3人でやりなさいとなるわけです。

川島:それはすばらしい!

:ただし、仕事が減るだけではなく、収入も減ります。仕事が半分になるということは、収入も半分になるということです。一方で、生活にかかるコストが減るわけじゃないから、家計が赤字に陥っていく可能性が大です。

川島:……どうすればいいんですか?

:そう、どうすればいいか。そこで収入に関する「発想の転換」をする。人々にとって大切なのは、実は収入そのものではなく、自由に使えるお金、可処分所得がどれだけあるか、です。たとえ収入が減っても、可処分所得が変わらなければ、生活水準は落ちない。

川島:うーん、わかったような、わからないような。そんなことってできるんですか?