「スラム化が問題になる可能性もある」
孫:行き場を失った人たちは、とりあえず街に集まります。そこで出てくる問題がまた、いっぱいあるわけで、交通渋滞、大気汚染、水質汚濁、治安悪化、スラム化などが起きます。つまりある場所が不法占拠され、無政府状態のまま、仕事のない貧しい人たちが集まってきてしまう。スラムって一度できてしまうと、人間のがん細胞みたいなもので、失くしてしまうのが困難です。犯罪の温床にもなりえます。
川島:なぜスラム化が起きるんですか?
孫:当てもなく街に出てきたのに、そこに職がないからです。収入がないし住む場所もない。だから、何となく裏通りみたいなところに溜まっちゃう。正当な仕事がないから、非合法な仕事に手を染めるようになる。一般の人たちは怖くて近寄らなくなります。「あのあたりは危ないから行っちゃいけない」って。すると、ますますそのエリアは非合法地帯になり、スラム化が進みます。
川島:日本の都市部もスラムができる可能性大ということですか?
孫:日本の場合、スラムが顕在化するケースはそれほど多くないとは思います。ただ、すでに日本でも失業者が増えている兆候があります。1日に食べる食事が学校の給食の1回だけという小学生が10人に1人くらいになっている地域が出てきているんですね。中には、その給食費さえ払えない親もいるわけです。こうした「欠食児童」たちを救うために、無料でご飯が食べられる場所をNPOが用意し始め、どんどんその数が増えているといいます。
川島:親の失業のしわよせが子供たちに及び始めているわけですね。
孫:今後、僕らの想像を上回る勢いで技術が進化すると、AIやロボットを使いこなせる人がめちゃめちゃ金持ちになる一方で、かなり多数の人たちが仕事を失う。こうした経済格差が顕在化するおそれは十分あります。
川島:すでに貧富の差が出てきているのに、シンギュラリティが起きて、仕事の8割が失くなってしまうと、格差はもっと広がりますね。
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