新潟県燕三条を拠点に、アウトドアを軸としたライフスタイル提案をしているスノーピークの代表取締役社長を務める山井太さんとは、同郷ということもあって、長いご縁を得てきた。本社社屋の建築物の斬新さ、展開されているアウトドア用品やアパレルのかっこよさに加え、ここ数年は、ラグジュアリーな「グランピング」や、建築家の隈研吾さんと作った「モバイルハウス“住箱”」が脚光を浴びている。
山井さんは、大柄で豪放磊落、圧倒的なワンマン経営者に見えて、実はそうでもない――自分の志や夢を語り始めると止まらなくなる。が、話の端々に、気後れやはにかみが見え隠れしている。雪国で生まれ育った性分からか、一度決めたら、辛抱強く思いを遂げようと努めるが、少しだけ引っ込み思案――新潟県民らしさに共感を覚える。
山井さんの、そしてスノーピークのかっこよさの源はどこにあるのか。新潟という地方でユニークなブランドを作り上げ、世界に向けて発信している理由などなど、改めて話を聞いた。

外部デザイナーに頼らない
川島:前回は、山井さんが「グランピング」を始めた根っこのところにある動機についてうかがいました。そして、十勝と白馬で行った「グランピング」が大成功したことも。ただそれも、背景にスノーピークという企業への信用や安心があってのことだと思います。そして、それを支えているのは、最高品質のスノーピークの製品の数々。ここで改めて、スノーピークのモノ作りについて聞きたいと思います。スノーピークの製品は、どれもかっこいいものばかりですが、外部の有名デザイナーを起用しているのですか。
山井:いえ、グラフィックやウェブも含め、デザイン的なものはすべて、社内デザイナーが手がけています。
川島:それはなぜですか?
山井:外部の方に依頼したこともあるのですが、機構デザインを理解していないと、どんな有名な方でも、うちのデザインはできないとわかったのです。以来、外にお願いするのはやめて、社内でやることにしています。
川島:機構デザインとは?
山井:機械の内部の構造のことですが、これを知っているかどうか、作れるかどうかが、うちのモノ作りでは、とても大事なのです。まずは道具として、独自性があって高度な機能を備えたモノを考案し、そこから構造を考える。そして、その構造をかなえるために、最適な部品を調達する、なければ工場と一緒に部品を作る。そしてもちろん、最終的には美しい姿形におさめなければならない。これが、スノーピークのモノ作りの信条です。でも、そこまで踏み込んでやれるのは、インハウスデザイナーだけと考えています。
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