衣食住を共にするキャンプは、人の深い理解につながる

川島:ただ、キャンプが人間性の回復につながるというところ、何やら難しそうでわかりづらいので、もう少し詳しく教えてください。

山井:そう難しいことを言っているわけではないのです。今の都会での暮らしでは、便利さや効率性を追求し、行き過ぎてしまっている部分があるのではないでしょうか。キャンプをすることで自然に触れ、少し原始的な生活をするわけですが、それによって人は、都会的なストレスから解放されて癒されるのです。それと、夫婦や家族との関係性も、都会では断片的な時間しか一緒にいないものが、キャンプに行くとずっと一緒なわけです。食事する、眠る、話すといった、人間として非常にベーシックなことを共有するので、深い理解につながることが多いのです。

川島:簡単に言うと、キャンプすることで、仲良くなっちゃうってことですか?

山井:キャンプによって、人とのかかわり方がプラスに転じるのは、僕が抱いてきた実感でもあります。スノーピークは、1998年からキャンプイベントを続けています。これに参加すると、皆さん仲良くなって、コミュニティが形成されるのです。つまり、人間生活の根源的な部分をシェアすることで、仲良くなれるのです。

川島:へえ、そうなんですね。

山井:ちょっと上から目線に聞こえるかもしれませんが、スノーピークが掲げている「人生に、野遊びを。」というスローガンは、自然に深く包まれることで人間らしさを取り戻し、個人や家族、地域が再びつながっていく。「本質的な豊かさを感じる暮らし」が人間らしさの回復につながっていくと考えているのです。かっこつけて言っているのではなくて本気で(笑)。

川島:なるほど。キャンプと人間性の回復ということ、今のお話でようやくつながったし、山井さんの本気度、よくわかりました! でも、キャンプとはちょっと違って、「グランピング」は、いわゆる富裕層を対象にしたものですよね。

山井:「グランピング」をやってみて感じたのは、参加してくれたのが、単なる富裕層というより、感度が高く、社会的影響力がある人たちということ。その意味で、僕たちの考えを広めるために、大きな助けになってくれると感じたのです。

川島:てっきり山井さんは、「グランピング」というラグジュアリーなキャンプ体験で、バンバン儲けようとしているのかと誤解していました。

山井:ビジネスですから、もちろん利益も大事ですが、それだけではないのです。今でもスノーピークの売上の85%程度はキャンプ用品が占めていますが、僕は「自然に深く包まれることで人間らしさを取りもどすこと」、その喜びを知る人を一人でも多く増やしていきたいのです。