地元の人が気づいていない観光価値を盛り込む

山井:それと川島さん、「グランピング」には面白いところがあって、他の商品の場合には、いわゆるセット販売にすると、価格を下げたりするものですが、「グランピング」は、セット販売にして価格を上げることができるのです。

川島:えっ、なぜですか?

山井:セットになることで、体験と感動の量が増えるからです。経験してもらうと、自分の人生価値が上がったくらいのインパクトがあるのです。先ほどの例で言えば、犬ぞりを経験するだけより、気球も、料理も、豪華なテントも、とセットにすると、価値が掛け算みたいになって、何倍にも膨らんでいくのです。これは、白馬でやってみて、よくわかったことのひとつです。

川島:なぜ最初は十勝で?

山井:実はこれ、帯広市から受託事業として依頼されたものなのです。帯広市は、冬の十勝の良さを違う角度からアピールして、観光事業として成立させていきたい。その部分の企画をうちにやって欲しいということで、地元と一体となってやったのも、良い結果につながりました。今後も事業として、継続することが決まっています。

川島:昨年10月に行ったという白馬での「グランピング」も、地元団体からの依頼ですか?

山井:そうです。こちらは、白馬の自然に惹きつけられたスノーピークと、地元のスキー場運営会社である八方尾根開発と白馬観光開発が実行委員会を組んで実施したもの。つまり、十勝も白馬も、「グランピング」という企画で地域の価値を上げるという組み立てにしたということです。

川島:白馬では、どんなことを?

山井:敷地全体はもちろんのこと、テントの室内にもウッドチップを敷き詰め、イベントでは、朝5時半からの「ご来光ツアー」をはじめ、熱気球フライト、高原モーニングヨガ、乗馬トレッキング、地元にある青木湖の上に白いカヌーを浮かべ、船上ランチなどをやったのです。1泊2日4食付きで1人12万円×2名、1組24万円に設定したのですが、好反応を得ることができました。

川島:絶対額としては安くないけれど、普段はできない自然の中の体験をしてみたい人が、それだけいるということですね。

山井:何より嬉しかったのは、体験したお客さんはもちろんのこと、地元の人にも喜んでもらえたことです。そもそも地元の方は、普段はスキー場を運営している方たちですので、提供する食事もカレーやラーメンといったものが主体(笑)。それを「グランピング」では、まったく違う次元に引き上げなければならない。そこを意識して、物凄くがんばってくれた。そういう体験は、うちにとっても楽しかったし、勉強になりました。

川島:準備は大変だったのでしょうが、結果的には、地元の人、お客、スノーピークの社員と、みなさんが幸せになった仕事ですね。

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