ラグジュアリーなキャンプ=「グランピング」
川島:そもそも「グランピング」とはどういうものなのでしょうか。
山井:「glamorous(グラマラス)」と「camping(キャンピング)」をかけ合わせた造語で、自然を満喫できる、ラグジュアリーなキャンプのこと。欧米で定着しつつあるリゾートレジャーのひとつです。僕の中では、日本できちんとした「グランピング」を提案したいという思いが続いていたのです。
川島:「グランピング」と言っても、ちょっとおしゃれな感じのキャンプも含め、いろいろなタイプが日本で紹介されていますが、山井さんが提案する「グランピング」とは、どういうものですか。
山井:うちが考える「グランピング」は、主に3つの要素が入ったものです。一つ目は「場所の力」。自然の雄大な景色、雪や紅葉も含め、自然がもたらす非日常感です。二つ目は、提供される食で、地元の食材がふんだんに使われているといったことはマストです。そして三つ目、自然を楽しむアクティビティを盛り込むこと。その地ならではの自然に触れながら、普段はできない体験を存分にできること。そのいずれもが、豊かで上質なレベルでなければならないのです。昨年2月には十勝で、昨年10月には白馬でやってみました。
川島:2月の十勝は、物凄く寒そうです。
山井:マイナス15度くらいでした(笑) その時の映像を、ちょっとお見せしましょうか。



川島:ありがとうございます。わぁ、キャンプとは思えない豪華な設えですね。滞在するのは、建築家の隈研吾さんがスノーピークと作った「モバイルハウス“住箱”」だし、しかも周囲は大自然。寒さに凍えながらタフに自然の中で過ごすキャンプとは全然違うし、豪華リゾートホテルでの滞在とも違う。これなら私も行ってみたいなぁ。
山井:先ほどもお話したように、ここでしか成立しないアウトドアのスタイルを提案するのが、うちの仕事。だから、泊まる場が屋内でなく、あくまで屋外であることにこだわりました。自然空間と「住箱」の板一枚、キャンプであれば幕一枚隔てただけの距離だからこそ、風のささやきや光の移り変わりなど、自然を肌身で感じることができるのです。
十勝では、寒いことを逆手にとった企画をいくつも盛り込みました。たとえば、ハスキー犬が引くそりに乗って滑走するとか。
川島:えっ、楽しそう! 犬ぞりって、どれくらいスピードが出るのですか。
山井:時速25キロくらい出るので、結構スリリングです。それから気球に乗る体験もやってみたのです。冬の北海道の大自然を、気球の上から眺めるのは、この時この場でしかできないこと。そして食事も、地元のおいしいものを地元で味わってもらうメニューに。これは、うちが青山でやっているレストランのシェフと、地元の料理研究家の後藤じゅんこさんのコラボレーションで考案しました。
川島:そのレストランって「I・K・U青山」のことですね。青山の骨董通りのそばにあって、屋上も解放しているのでグランピング気分を楽しめるレストランです。考えてみれば、あのレストランも、スノーピークが提案するアウトドアスタイルのひとつと言えますね。
山井:食は欠かせないもののひとつ。自然に触れながら食べる料理は、格段においしいし、暮らしに豊かさをもたらしてくれるものと考えているのです。
川島:映像を見ていると、惹き込まれちゃいます。写っている皆さんがコートに身を包んで屋外で食べている様子が楽しそうで、格別なディナーだったことが伝わってきます。風景もご馳走のひとつになっていますね。豪華ホテルのラグジュアリーとは、また別の意味でのラグジュアリーと言えそうなシーンです。
山井:この「グランピング」は、いわゆるインフルエンサーの方をご招待して行ったのです。
川島:招待客からの反応も当然、良かったのでしょうね。
山井:皆さんに「いくらだったら払ってもいいか」と聞いてみたところ、一泊二日で20万円から50万円くらいならOKという答え。50万円という声が少なくなかったのに、ちょっと驚きました。世界でさまざまなラグジュアリーを経験されてきた感性の高い人たちが、「グランピング」に感動し、その分の対価を払っていいと言ってくれたのです。ということは、それだけの価値を感じてくれたということです。これはイケると思いました。
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