スノーピークの製品には「永久保証の価値」がついています
川島:買っていったのは、どういう方たちだったのでしょうか。
山井:ライフスタイルとしてのアウトドアキャンプを身に付けていて、恐らく死ぬまでキャンプをやり続ける人たちです(笑)。そういう人たちは、モノについてのこだわりもすごいし、良いものにはそれなりの対価を払う。日本にもそういうマーケットがあることがわかったのです。だから、スノーピークのすべての製品には「永久保証の価値」が付いています。

川島:「永久保証の価値」ってすごいですね。でも、「徹底的に品質を上げる」と言葉にするのは簡単ですが、時間も手間暇もかかりそうな。
山井:そうなんです。父がそうしたように、「自分たちもユーザーである」という考えに基いて製品の開発にかかり、仮説と検証を繰り返しました。たとえば、「ヤエンストーブ レギ」は燃焼器具なのですが、折り畳み式のゴトクが付いていて、カートリッジに合わせて脚のサイズを変えられる上、分離式並みの低重心など悪条件でも使える高機能を備えているものです。
川島:私はアウトドアと縁がない人間ですが、グッドデザイン賞の審査会であれを見た時、すごくかっこいいと思いました。ゴトクを回転させると、手のひらサイズになって収納できちゃうところも、ホント、良くできてるなぁって。
山井:機能を磨いて品質を上げることに徹し、無駄な要素を排除していった結果、あの形になったのです。
川島:最初から「かっこいいデザイン」を目指したものって、少しあざとくなっちゃうところ、ありますよね。でもスノーピークの製品がそうじゃないのは、機能ありきで徹底したモノ作りをしていって、それが、結果的にかっこよさになっている。つまり、表層的な色や形ではなく、意味の詰まったかっこよさなんですね。
30組のユーザーの声を聞いて、流通構造を変えた
川島:1994年から2000年頃まで下降線だったとのことですが、どう回復したんですか? 一気にぱあっととか。
山井:いや、そう簡単ではなかったのです。売り上げは相変わらず落ち続けていました。それで僕は、スノーピークが企業として存続していく社会的意義が、よくわからなくなってしまったのです。
川島:ええっ、自信満々に見える山井さんが、そんな危機的状況になったなんて意外です。
山井:自分たちが「使い手」の視線に立って、最高品質のものを作り、お客様に提供したつもりなのに手応えがない。これはどうしたことかと考えあぐねた結果、キャンプイベントを開催し、直接、ユーザーの声を聞いてみることにしました。山梨県の本栖湖に30組の顧客を集めて「スノーピークウェイ」というイベントを行ったのです。
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