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平松洋子(ひらまつ・ようこ)
エッセイスト
1958年岡山県生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、『野蛮な読書』で第28回講談社エッセイ賞受賞。ほかに『味なメニュー』『ステーキを下町で』『夜中にジャムを煮る』『サンドウィッチは銀座で』、『ひさしぶりの海苔弁』など。 (写真:鈴木愛子、以下同)

川島:今回は最終回ということで、働き方について、もう少しお話をうかがいたいと思います。平松さんは文筆家として、一人で仕事してこられたわけですよね。

平松:組織に所属してはきませんでした。だからと言って、一人で仕事してきたとは、全く思っていないのです。自分の力なんか大したことではなくて、編集者の人に力を出させてもらったり、チームで仕事することで広がりのある展開になったり、自分が思いもかけないところに踏み出せたというのが正直なところです。

川島:人と仕事することで、自分が開かれていく楽しさってありますよね。

平松:仕事の一番の面白さって、そこにあると思うのです。だから、人に委ねるということも大事だと思います。

川島:委ねるですか?

平松:はい。相手の力を信頼して、思い切って任せる。けっこう難しいことでもあるんですけれどね、思い切って潔く。

川島:でも、それって悩みます。私は頑固だし、仕事をする相手の方も頑固なこと、結構、多いのです。どこまで自分の頑固を通して、どこまで相手の頑固を引き受ければいいのか。

平松:だんだん、自分が最初に意図したものが、そのまま形になるだけではつまらないと思うようになりました。「こんなふうに進むとは思っていなかったけれど、思いがけず素敵なものになって、本当に良かった」。そんな経験に遭遇すると、わくわくしちゃいます。

川島:確かに一人だけで考えていると、自然に枠組みみたいなものを作ってしまいますものね。

平松:予定調和って、面白くないですものね。一方で、書くという行為は、かなりかっこ悪いことだと思っていて……。だって普通、言わなくてもいいこと、別に言葉にしなくていいことを、あえて文章にするんですよ? それって、めちゃくちゃ恥ずかしい。でも書かずにはいられない。

川島:意外です! 良い意味で言い切っていらっしゃる文章が多いので、もっと物書きとして、確信を持ってやってこられたのだと思っていました。