
エッセイスト
1958年岡山県生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、『野蛮な読書』で第28回講談社エッセイ賞受賞。ほかに『味なメニュー』『ステーキを下町で』『夜中にジャムを煮る』『サンドウィッチは銀座で』、『ひさしぶりの海苔弁』など。 (写真:鈴木愛子、以下同)
川島:この連載のタイトルは「『ダサい社長』が日本をつぶす!」というものなんです。
平松:かっこいいタイトルです! 思わず膝を叩きました。でも私、社長ではないのに、いいのですか?
川島:いいんです! ここ10年くらいの“まち”や“みせ”を見ていると、「ライフスタイルを豊かに」とか「日常をかっこよく」といった言葉が氾濫している割に、暮らしを取り巻くものが、ちっともかっこよくなっていない。いや逆に、日本製品で「かっこいい」とか「美しい」といったものが少なくなっている。「いいな」と思うものの大半は、海外の製品になっている。つまり、「かっこいい」とか「美しい」の感覚が、日本企業と消費者の間で、随分とずれているのではないか。そんな疑問から、さまざまな分野の方にお話をうかがっているのです。
平松:私でもお役に立つことが?
川島:もちろんです。平松さんは、エッセイストとして、料理や食を中心に、生活全般にわたる視点から、さまざまな執筆活動をされている方。日々の暮らしを営む目線から、事象を鋭くとらえた文章には、いつも「ふむふむ、なるほど」と頷かされています。今日は、そんな生活者の視点から、デザインのお話をうかがえればと思って、インタビューをお願いしました。
平松:それでは何でも聞いていただければ。
川島:よろしくお願いします。早速ですが、冷蔵庫や電子レンジなど、キッチン周りの家電のデザイン、以前からとても気になっています。
平松:ああ、本当に悩ましいジャンルですよね。
川島:キラキラした塗装だったり、意味のない金や銀のラインが引いてあったり、ダサいもの(笑)がある一方で、妙に無機的でスタイリッシュなものもある。その間にある「普通」があったらいいなと、ずっと思ってきました。
平松:本当に。わが家のトースターやミキサー、フードコンテナーなども、実は海外メーカーのものです。だから、海外の製品を選んでしまうという感覚、よく分かります。
川島:平松さんのお宅ですから、さぞ、かっこいい台所なのでしょうね。
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