中高校生とM&Aのプロが交流

 「先週はインドにいて、今日の夕方からシンガポールに発ちます。残念だけど途中で退席しなければなりません」

 当日、プログラムの冒頭に開校の挨拶をしたGCAの酒入和男マネージングディレクターがこうわびると、会場からどよめきが起きた。世界中を走り回る姿が感銘を与えたらしい。

 酒入は、どうやって自分は今の職業を選んだか、どうしてM&Aのプロになったのか、M&Aが今の日本にとってなぜ重要なのか、説明した。

 「本職の方々が登場した瞬間、その場の空気が変わりましたね」

 当日、その場に参加していた三省堂の早川延子氏はこう語った。早川氏は新しいスタイルの教育に興味を持ち、こうした取り組みを頻繁に見学しに来ている。
 

 今回の総合司会を務めたのは岡田知也エグゼクティブディレクター。隣で助手を務めたのはその長男で中学1年生の拓己君。

 岡田はM&Aを学園生活の文化祭に例えて説明した。毎日の授業や部活とは違って、特別な日のために出し物や屋台の準備をする。買い出しをしたり、役割分担をしたり、普段やらないような準備が必要。その中から学園のスターが登場したりする。毎日の学園生活とは別の、非日常の特別な舞台、それがM&Aだ。

 「中高生と聞き、最初は一体どこからM&Aを伝えたらいいか、迷いました」。岡田が思いついたのが文化祭という例えだった。

「それを選ぶと社員の士気が下がる」

 当日のプログラムの簡単な説明が終わると早速、ビジネスゲームがスタートする。それぞれの業界に3チーム。業界は「モバイル業界」、「子供服業界」、「化粧品業界」。合計9チームが経営手腕を競う。

 各社(各チーム)の経営陣(学生)は、いろいろなタイミングで、イベントカードを引く機会が与えられる。カードには規制緩和、技術革新、天変地異など、ビジネスを大きく左右させる要因が描かれている。

 それぞれのチームには、経営の打ち手となる「施策」が書かれたカードが複数枚、配布されている。イベントが発生した時点で、うまく施策(カード)を繰り出せば、ビジネスは成長する。限られた施策を、どのタイミングでどこに当てるか、ここは議論のしどころだ。

 GCAに入って6年目の石川奈々江はゲームの様子をこう語る。「海外から競合が参入してきて自社のシェアを奪われた時のことなのですが、人件費を下げる施策のカードを選ぼうとしたメンバーに、『それを選ぶと社員の士気が下がる』と反対したメンバーがいました。社員の士気まで視点が及ぶとは。驚きました」。

 GCA入社2年目、東信吾の感想も同じだ。「高校生が『設備投資』なんて言葉を普通に使っているのですよ。中3から高3までいたのですが、年齢の差を感じさせず議論をしていました。議論の仕方もとても上手で、他の人の意見を尊重しながら、それに自分の意見を上乗せする形で発展させていました」。

 昨年入社の柳澤薫も中高校生に目を見張った。「パッと見ると控えめな子も自分の意見をバンバン言っていて驚きました。それから皆、負けず嫌い(笑)。でも、相手をちゃんと理詰めで説得しようとしていましたよ」。

 ビジネスゲームが終わる。一番、企業を成長させたチームは成長率31%。追い風にうまく乗った。一方、最下位チームは5%ダウン。

 「ビジネスには運、不運がどうしてもある。131%と95%と数字だけ見れば差は歴然。ただ、31%成長は追い風に乗ったから。向い風の中、ダウンを5%で止めたのも立派」。岡田は最下位チームをこう評した。中高生の経営者たちは、うれしそうに頷いた。