全4657文字

農業を国民に広く開放を

 もう1つの意義は、農業に参加する人を増やすことだ。日本は超高齢化社会に突入しており、市民農園はシニア層が健康を維持し、充実した日々をおくるうえで絶大な効果がある。だが加えて重要なのは、そこに子どもたちが集うことで、アマチュアも含めた競技人口の増加につながる点にある。その中から、未来の経営者が生まれる可能性は十分にある。

 農業を広く国民に開放しよう――。それが、筆者が取材を通してずっと考えてきたことだ。これまでの農政は政治的な意味も含め、農家のことばかり考えてきた。それがうまくいき、後継者を確保できたのならともかく、実際に起きているのは、バケツの底が抜けたような高齢農家のリタイアだ。努力した担い手は結果的に残存者利益を享受できるだろうが、それだけが農業のあるべき姿とは思えない。農地の荒廃をみれば、なおさらそう思う。

 こうして一連の取材は、新しい新規就農者たちにたどりついた。舞台は東京の西部地区。脱サラの井垣貴洋さんが2009年に瑞穂町で就農し、新しいチャレンジが始まった。続々と就農する若者たちは、必ずしも企業的な農業を目指しているわけではない。かといって「清貧の暮らし」をよしとしているわけでもなく、生計を立て、貯蓄をし、家族を養うのを目標にしている。