全5651文字

 今回も昨日に続き、東京の西部地域で新規就農した「東京NEO―FARMERS(ネオファーマーズ)!」のメンバーたちを紹介したい。まず取り上げるのは、井垣貴洋さんと美穂さんの夫婦。東京都農業会議の松沢龍人さんを訪ね、2009年に瑞穂町で農業を始めたことが、その後続く東京での新規就農の起点となった。メンバーの間では「レジェンド」と呼ばれる夫婦だ。

東京の新規就農第1号となった井垣貴洋さん(瑞穂町)

 井垣さん夫婦については今から3年前にこの連載で紹介した(2015年9月18日「ネットもスマホも要らない!これぞ農的ライフ」)。ともに福祉関係の仕事をしていた2人は、貴洋さんが30歳になるのを前に転職を考え始め、いつまでも続けたい仕事として出した答えが農業だった。「できるだけシンプルであること」が2人のモットー。宅配セットでファンを少しずつ増やしながら、自分たちが理想とする農業を追求していた。

東京で農的な暮らしを追求する井垣さん一家。8歳の娘さんはこの日は畑にいなかった(瑞穂町)

 3年たち、貴洋さんにまず聞きたかったのが、栽培方法だ。農薬と化学肥料を使う近代農法へのアンチテーゼとして、有機肥料で育てることを一般に有機栽培と呼ぶ。これに対し、貴洋さんは有機肥料さえ使わない自然農法と呼ばれるやり方を選んだ。しかも、同じ品種を同じ畑で育て続ける連作だ。

 自然農法は、一見すると非科学的に見える。光のエネルギーを使い、植物は水と二酸化炭素から炭水化物を合成する。農業はそれを、収穫という形で畑の外に運び出す。その際、植物が自ら合成することのできない微量要素も作物と一緒に畑から持ち出す。それを続けていけば、畑は養分が減ってやせ細る。肥料をやらないで、畑を続けることはできないと、ふつうなら考える。

 実際、2人が就農したとき、「初めのうちはもともと畑に入っていた肥料が残ってるから3年は続くだろうが、その先は育たなくなる」と言われたという。この予想に対する貴洋さんの反論はいたって単純だ。