全5423文字

農業の未来をどう思っていますか。

諸藤:農業の未来はよくなっていくと思ってます。我々のような会社を含め、どんどん新しいことができるようになってます。市場原理がより効くようになってきていて、健全な競争が起きつつあります。

 ただ、専業農家だけできれいにパズルが埋まるかというと、そんなことはないでしょう。例えば、都市近郊の農地をどうするか。都市近郊で40~50アールの小さな規模から始めて、次のステップに移るというやり方もあるでしょう。おいしいものを作っていれば、上に上がっていくことができる。そういう仕組みを作ることに、うちが貢献できればと思っています。

食料余りの時代に農業を守る意味

 日本は食料が有り余っており、食料問題が事実上、存在しないという歴史上、極めて幸運な時代にある。だから、食料を供給する手段である農業を守る意味を考えていくと、答えを出すのはけっこう難しくなる。

 例えば、補助金を出して、大勢の農家を守ることが、すでに余っている食料の増産につながれば、農業の収益性はさらに低下する。下がった分をやはり補助金で補うのか。どうやってこのジレンマを解決するのか。

 答えの1つは、食料の潜在的な供給能力、つまり農地を守ることだと思う。ただし、食料を生産することを主目的に農地を利用するだけでは、上記のジレンマから抜け出すことはできない。そこで、農産物を売る対価ではなく、農地をサービス業的に利用することによる収益で、農地を次代につなぐ。

 アグリメディアは、市民農園の展開から出発し、農業の求人サイトや農業を学ぶ講座の開設へとビジネスの幅を広げてきた。市民農園に集うアマチュアを増やすことが、農地と農業を守る人を増やすことにつながっていく。それが、高齢農家のリタイアではき出される農地が荒廃するのを防ぐ一助になる。

 冒頭で、農業は理屈抜きで大切だと書いた。理屈抜きでそう思うには、農業に触れることが一番の近道だ。それは農家のための農政を脱し、農業を広く国民に解放することに結びつく。ちなみに、筆者にとっては田畑を訪ね、農業を取材することが、そう実感するためのよすがとなっている。

砂上の飽食ニッポン、「三人に一人が餓死」の明日
三つのキーワードから読み解く「異端の農業再興論」

これは「誰かの課題」ではない。
今、日本に生きる「私たちの課題」だ。

【小泉進次郎】「負けて勝つ」農政改革の真相
【植物工場3.0】「赤字六割の悪夢」越え、大躍進へ
【異企業参入】「お試し」の苦い教訓と成功の要件

2018年9月25日 日経BP社刊
吉田忠則(著) 定価:本体1800円+税