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働き盛りの世代で雇用就農は厳しい

あぐりナビに登録しているのは、どのような人たちですか。

諸藤:全員ほぼ働いている人で、中にはすでに農業法人で働いている人もけっこういます。転職を希望する人が多く、かなり流動性の高い業界です。

 成約率が圧倒的に高いのは、20代から30代です。とくに単身だと実現しやすいです。反対に、40代から50代半ばは厳しい。給与の問題があるからです。その世代で成約するのは、奥さんの収入が多かったり、もともとかなりお金を持っていたりと、イレギュラーなケースです。

 このことは農業の根本的な問題を映しています。例えば40代で年収が500~600万円ある人が200~300万円の農業法人に飛び込むことは、経済的に相当難しい。マッチングしないので、こちらも紹介するのを控えることが少なくありません。

 働き盛りの世代で、雇用就農はかなりハードルが高いと思います。農業法人で働くのではなく、みずから農地を借り、投資をして就農するパターンもありますが、そうなるとハードルはさらに高くなります。

20~30代で農業法人に就職した人は、その後もその法人で働き続けることはできるでしょうか。

諸藤:なかなか年収が上がらないので、たいてい雇用される形ではなく、独立して自分で農業をやる形に変えるか、あるいは他の産業に移ることになります。農業法人が職員に対し、そこで一生働けるキャリアプランを提供するのは相当難しい。給料をどんどん上げることができればいいが、農業の収益性から見て、そういう構造にはなっていないからです。その構造を変えない限り、従業員に600万円の年収を払うことはできません。

 うちに関して言えば、1つのサービスをやっているだけでは絶対ダメだと思っています。それがうちがいろんなサービスを手がける理由です。農業に貢献するサービスを、10個やる必要があると思っています。いま市民農園や観光農園、人材サービスをやっていますが、手取りを増やすインパクトが大きいのは流通だと考えています。道の駅の経営などをテスト的に始めています。

アグリメディアがやっていることは農業なのでしょうか。

諸藤:その質問をよく受けますが、あくまで農地を使ってやっている事業であり、農地の付加価値のつけ方の1つだと思っています。地域ごとに農業のあり方は様々あると思いますが、シェア畑は都市近郊の農地でもっとも収益をあげることのできるやり方でしょう。それを粛々と拡大しながら、どんどん次の事業に投資し、新しいことにチャレンジしています。

 いまの業界構造からすると、農地はまだまだ集まってきます。実際、全国から月に200件相談があります。課題はそこに市民農園を作って、収益をあげることができるかどうかです。その点で言えば、まだニッチなサービスにとどまっているので、啓発活動が必要だと思っています。

 自分が野菜を作ることは無理だと感じている人が少なくありません。一般の人にとってみれば、けっこうハードルが高い。例えば、「毎日水やりにいくことはできない」と思っているケースです。うちのサービスを利用すればそんなに農園に行かなくていい。週1回でいいわけです。極論すれば、週1回行かなくてもいい。うちがサポートするからです。そういうサービスを作りました。

 利用してくれている人たちは、口をそろえて「自分で作った野菜の味は全然違う」と言ってくれます。とったその日に食べると、本当においしい。とくにトウモロコシがそうです。それを伝えることができれば、一発です。とれたての野菜を食べたことのない人がけっこういます。