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受講生でもっとも多いのは50代

「週1回の農作業」を可能にするアグリメディアのシェア畑

最近の事業の状況を教えてください。

諸藤:市民農園の「シェア畑」は今、約80カ所にあります。面積は合計で20ヘクタールほど。1年前は60カ所くらいでした。これから1年で、30~40カ所増える可能性は十分あります。

 農業学校の「アグリアカデメイア」というサービスも始めました。生徒の半分はシェア畑の利用者です。植物生理など、農業の原理原則をもっと体系的に学びたい人向けのサービスです。座学で勉強したいとか、有機農業を極めたいとか、ニーズはいろいろあります。シェア畑から派生し、「もっとこういうニーズがあるんじゃないか」と考えて始めたサービスです。

 受講生でもっとも多いのは50代です。その中には、いずれ田舎に行って農業を始めてみたいと思っている人もいます。早期退職して農業をやりたいと考えている人もいます。そういう人のために、就農準備講座を用意しています。実際に農家のところに行って1~2日働き、農業の仕組みを学ぶ。シェア畑から一段レベルアップしてから就農するためのカリキュラムです。

 もともと農業求人サイトの「あぐりナビ」というサービスもやっていました。ただ、農業を始めたいと思っても、それまで農業をまったくやって来なかった人もいます。いきなり農業法人に就職するのではなく、もっと手前から、例えば学校で農業のことを学んでから、求人に応募したほうがいい。アグリアカデメイアは、シェア畑とあぐりナビの間をつなぐ商品とも言えます。

求人サイトの運営で何を重視していますか。

諸藤:求人の精度を上げていくことです。農業の求人には給料があいまいだったり、実際働いてみると休みがほとんどなかったり、ほかの産業ではブラックと言われかねないことがけっこうあります。それを改めるため、我々は、住む場所を用意してあるのか、どんな住まいなのか、休日はどうなっているのかなどを明確にするよう求めています。必須の条件です。

 そうしないといい人材は来ないし、あとで結局、痛い目にあいますよ、ということを訴えています。透明性を高め、求人の質を上げるんです。農業で働きたいと思っている人にきちんと情報を提供し、他産業では当たり前にやっていることを、農業の世界でも確立すべきだと思っています。

 マッチングの精度を高めることにも取り組んでいます。たんに求人広告を載せて終わりにするのではなく、施設栽培の経験がどれだけあって、どんな機械を扱えるかなど、登録者の情報をデータベース化しています。そのうえでどの人を紹介すべきかを考え、農業法人と農業で働きたい人をつなぎます。

シェア畑を利用しているのは、どういう人たちですか。

諸藤:30~40代は子どもを切り口にやり始め、結果的に夫婦のどちらかが農業にはまるケースが多い。「子どもと一緒にやる」という動機だけではあまり長く続かないようです。子どもが思ったほど熱心にやらず、自分も農業にはまっていないと、忙しくなるとやめてしまう。

 これに対し、50~60代はまずやめない。農作業が生活の中に組み込まれていく人が多いからです。朝野菜をとって食べるのが、自分の生活になっていく。ライフスタイル型の農作業になっていくんです。

利用者の継続率を左右する要素はほかにありますか。

諸藤:農園のインストラクター、うちで言う菜園アドバイザーによって継続率に違いが出ます。それが顕著になってきていて、サービスをまだ標準化できていないことの裏返しとも言えます。 いいインストラクターは利用者をほめて、うまく盛り上げることができるので続きます。

 大事なのは、サービス業として取り組めるかどうかです。一概には言えませんが、そういう人の中には大企業でそれなりの立場だった人が多いようです。農園の趣旨や利用者のニーズを適格にとらえ、コミュニケーションを取りに行くことができます。もともと長年、家庭菜園をやっていたりしていて、この仕事を生きがいと感じてくれている人もいます。

 反対にうまくいかないのが、自分の知識をひけらかしてしまう人です。「農業の先生」みたいになってしまうと、継続率が下がります。農業には明確な1つの答えはありません。知識を教えることばかりに集中し、自分の経験で断言し続けてしまうと、菜園アドバイザーとしてはうまくいきません。

農機具は農場にそろっている