農業界には、制度や補助金で守ってもらいたいと考え、政治に近づきたがる体質がたしかにある。これに対し、小田嶋氏は補助金に左右されない経営を目指しているから、発想が自由になる。政府や政治がからむ「空中戦」ではなく、現場からものを考える。これこそ健全な農業スピリッツと言うべきだろう。小田嶋氏は「一番改革すべきなのは農協であり、農家だ」と訴える。

 こう書くと、「農業には様々な形で補助金が入っているから、全農が民間の組織とは言え、政府が口を出す必然性はある」という反論が出るだろう。まさしくその通り。農協の組織をいじることではなく、補助金や制度こそ見直すべきなのだ。

生産者の努力では対応できない分野

 ここからが本題だ。小泉氏が農林部会長に就いた翌月、みずから主導して昨年11月17日にまとめた「農政新時代」というペーパーにはじつに様々なことが書き込まれていた。例えば、「生産資材(飼料、機械、肥料など)価格形成の仕組みの見直し」とある。全農に改革を迫る論議はここから出発している。

 これに関連するが、もっと注目したのは「生産者の努力では対応できない分野の環境を整える」という一文だ。

 同様のことを、小泉氏は様々な場でくり返した。「意識しているのは、農業者が対応できない、どうやっても無理な部分をいかに政治が変えていけるか」。今年の1月22日の自民党本部での発言だ。

 うがった見方かもしれないが、筆者はこの発言を聞いたとき「なるほど」と思った。おそらく、「農家の問題」には手をつけないだろうと感じたのだ。たしかに、日本の農業を高コストにしている背景に、全農や肥料・農薬メーカー、機械メーカーなど「農家以外」の問題はある。だが、一番深刻なのは、「農家の問題」であり、それを支える農政だ。

 では「農家の問題」とは何か。規模の小さい兼業農家ばかりの農業構造だ。それが極限まで高齢化し、引退が始まり、日本の農業は担い手不足と耕作放棄の危機にひんしている。にもかかわらず、農政は「高齢の兼業農家」にも広く補助金が回るようなことを続けている。「優しい政策」ではあるのだろう。だが、それが既存の構造を温存する。資材をできるだけ安く仕入れるよう、農協や全農を下から突き上げる機運も高まりにくい。

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