一連の報道に筆者は違和感をおぼえた。肥料や農薬、機械など農業資材の日本の価格が国際的にみて高いのは事実であり、全農に努力不足の面があるのは否定できない。規制会議の提言に全農が耳を傾けるべき内容もある。だが、いくら農産物流通のシェアが大きくても、全農を含む農協は民間組織だ。民間の活動の抜本的な見直しを、政府が迫るにはおのずと限度がある。

 それが「高めのボール」通りの結果にならなかったからと言って、「後退」と論難する尺度はどこにあるのか。もし政府の言うことを民間組織の全農が100%受け入れたら、それこそ奇怪な話ではないだろうか。

会議の雰囲気に違和感

 そんな疑問を、小泉氏に面と向かってぶつけた人がいる。秋田ふるさと農業協同組合(秋田県横手市)の小田嶋契組合長だ。11月2日に自民党の農業関係の会合に呼ばれてこう言い切った。

 「農業をどうすべきかという話をするのであれば、我々『民』を変えるよりも、法律・制度を根本的に見直すことが必要ではないか。政治家は法律や制度をつくるのが仕事で、民間をいじくりまわすことが仕事ではないと思っている。先生方には、法律や制度がしっかり機能するよう見直しをお願いしたい」

 全中の奥野会長に続き、農協の組合長の発言を取り上げたことに、またも「抵抗勢力の擁護」と思う人がいるかもしれない。だが、秋田ふるさと農協はこの連載で以前紹介したように、補助金でコメの生産を左右しようとする農政に抗し、独自の販路開拓に取り組んでいる農協だ(2015年10月9日「我々は札束でほおをたたかせない!」)。

 11月2日の自民党の会合では、小田嶋氏は全農の役割を評価する発言もした。後日、小田嶋氏に発言の真意を聞くと、次のように答えた。

 「全農のやっていることに全面的に満足しているわけではない。だが、会議の雰囲気に違和感を持ったのでああ言った。みんな小泉氏に呼ばれるとうれしがり、小泉氏から褒められたいと思っているようにみえる」

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