ここ数年、農協の上部組織が改革のテーマになり続けている(東京・大手町)
ここ数年、農協の上部組織が改革のテーマになり続けている(東京・大手町)

 潮目を変えたのが、政府の規制改革推進会議のワーキング・グループが11月11日に出した意見だ。全農が手がけている肥料や農薬などの農業資材の購買事業について「仕入れ契約の当事者であることをやめる。そのために1年以内に組織を転換し、人員の配置を換え、関連部門を譲渡・売却する」ことを求めた。事実上、購買事業からの撤退を迫る内容だ。

 農産物の販売についても「委託販売から買い取り販売に1年以内に移行すべきである」と提言した。買い取り販売にすれば、農産物を売るリスクは現状のように農家ではなく、全農が負うことになる。

高めのボールを投げる

 小泉氏と奥野会長の「対話路線」が変調した節目として規制会議の提言を取り上げたのは、小泉氏と規制会議が連携していたからだ。実際、提言に先立ち、小泉氏の周辺からも規制会議の内部からも「高めのボールを投げる」という同じ表現が伝わってきた。提言がそのまま実現するとは当事者も思っていないが、全農から何らかの譲歩は引き出せるという意味だろう。

 農協サイドは猛反発した。奥野会長は11月21日に東京に1500人を集めて緊急集会を開き、規制会議の提言を「容認できない」とする決議を採択した。奥野氏は過去の全中の行動パターンを改め、日比谷公園でシュプレヒコールを上げるような示威行動は控えてきたが、規制会議の投げた「高めのボール」に対しては対決姿勢を鮮明にした。

 決着はその3日後。政府・与党が24日にまとめた農業改革案からは、全農の事業の見直しについて「購買部門の1年以内の新組織への転換」「買い取り販売への1年以内の移行」などが抜け落ちた。規制会議が求めた「貯金事業を手がける農協を3年後をメドに半減させる」という項目も消えた。利幅の大きい貯金事業に甘え、農協の農産物販売に十分力が入っていないという問題意識から出た提言だった。

 複数のメディアはこれを改革の後退として批判的に報じた。規制会議が出した提言と結論を比べて落差の大きさを強調し、改革が抵抗勢力に押し戻されたとする論調だ。「全農抜本改革見送り」「小泉氏に農林族の壁」「改革後退」などの見出しが躍った。

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