小泉進次郎氏が自民党の農林部会長に就いて間もないとき、一本の記事をこの連載で書いた(2015年11月13日「小泉進次郎が格好いいのは分かったが」)。ベテラン農林族が集まる会議をテンポのいい議事進行で小気味よくさばく様を伝えつつ、記事は「お手並み拝見」としめくくった。そろそろ総括が必要だろう。

小泉氏は農業資材の値段引き下げをテーマにした(東京・永田町)

いつの間にか「業」が「協」に

 議論がひとまず決着したのが今年の11月下旬。この間に筆者が感じてきたのと同じことを、そのまま表現した発言があるので紹介しておこう。

 「いつの間にか『業』が『協』に変わった。農業構造の改善ではなく、農協改革という形にすりかえられた」

 農協の上部組織、全国農業協同組合中央会(全中)の奥野長衛会長の12月8日の記者会見での発言だ。まぎらわしいので先述しておくと、全中は農協の方針を決める団体で、環太平洋経済連携協定(TPP)への反対運動などの旗振り役としても知られる。

 これに対し、同じ上部組織でも全国農業協同組合連合会(全農)は肥料や農薬などの農業資材の調達や、農産物の販売を手がける団体で、農業商社とも称される。国際的にみて高いとされる農業資材の引き下げ問題で、全農の事業の見直しが論議の焦点になった。

 全中の奥野会長の発言を「筆者が感じてきたのと同じ」と紹介すると、あたかも「改革派vs抵抗勢力」のうち、後者のかたを持つように思われるかもしれない。「農協のトップ」と聞くだけで、「敵方の親玉」と感じる人もいるだろう。だが、小泉氏の論議の進め方はそんな単純な対立構図にはなかった。

 奥野氏は、農協を通さずに農産物を売る農業法人との連携を呼びかけるなど、農協内部では「改革派」だ。小泉氏もこれを踏まえ、今年3月に奥野氏の地元の三重県を訪ねて会談するなど、連絡を取り合ってきた。このやり方は、「抵抗勢力」を一方的に措定し、「敵味方の構図」で相手を追い込む手法とは一線を画していた。奥野氏もみずからの方針を、「対話路線」と表現していた。