農政の関心はこの問題に関し、あまりに水田に偏っている。その象徴が「水田フル活用」という政策目標だ。念頭にあるのは数が多く、政治への影響力が大きいコメ農家であり、それが最もゆがんだ形で政策になったのが現行の飼料米の補助金だ。

 くり返しになるが、高齢化と人口減少で主食であるコメの消費は今後も減り続ける。飼料米のように補助金をつぎ込んで「官製市場」を拡大させ続けるのは限界があり、必要となる水田の面積も減り続ける。つまり、水田でない農地の比率が今後ますます高まっていく。

日本の農地をどう守るのか

放牧は効率的な農地利用の1つ(茨城県常総市)
放牧は効率的な農地利用の1つ(茨城県常総市)

 にもかかわらず、水田ばかりに政策を集中していて、日本の食糧基盤を将来の世代に手渡すことができるだろうか。これは大規模で先進的なコメ農家が自らの経営を発展させる努力とは別次元の問題だ。

 最悪なのはコメ消費が減り、コメ農家が引退し、田んぼが無秩序に荒れていくことだ。それが、今回テーマにした構造問題の先にある最も危険なシナリオだ。事実、条件の悪い地域では耕作放棄地が増え続けている。

 人口が減少し、田んぼの需要が減る中で、日本の農地をどう守るのか。コメと比べてはるかに生産効率が高いトウモロコシや牧草を育て、家畜のエサにするのも選択肢だろう。高齢化に伴う健康志向の高まりで、野菜の需要は堅調に推移するだろう。都市近郊では、市民農園などサービス業的な農地利用のニーズが増えるのは確実。オランダ型のグリーンハウスのように、新しいテクノロジーを導入しやすい分野にもっと農地を回す手もある。

 必要なのは、将来の日本社会の姿を見据えた大きなビジョン作りを農政の柱にすることだ。民間のバラバラの経営に任せていたのでは、秩序のある農地利用の姿を描くことはできない。農村票ばかり気にし、補助金を配ってよしとする近視眼的な政策とは最も無縁なものだ。

 「減反面積の配分」から国が撤退する2018年は、コメ偏重農政と決別するきっかけになる。荒れはてた風景を未来に手渡すことを防ぐため、今何をなすべきなのかを考える。2018年がそのスタートの年になることを期待したい。

農地のサービス業的な利用もある(東京都国立市の「くにたち はたけんぼ」)
農地のサービス業的な利用もある(東京都国立市の「くにたち はたけんぼ」)
新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売