年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?

(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

農政はコメに偏ってきた(東京・霞ケ関)
農政はコメに偏ってきた(東京・霞ケ関)

 日本の農業を半世紀近くにわたって束縛してきた制度が2018年についに廃止になる。本来なら、大改革として大騒ぎになりそうなところだが、実際は淡々と静かに仕組みの見直しが進むことになりそうだ。コメの生産調整(減反)のことだ。

 冒頭で「騒ぎにならない」と書くと、読者の関心が退いてしまうのが心配だが、話を先に進めよう。大きな変革は、まるで昨日と同じような表情を見せながらゆっくりと進行することもあるからだ。今回は日本の農業の構造問題を考えてみたい。

地域ごとの生産調整へ

 減反は1970年に本格的にスタートした。もともと旧食糧管理制度の赤字を解消するのが目的だったが、最近は米価の下落を防ぐ制度に変質している。国が都道府県にコメの生産上限を指示し、さらに市町村、農家へと上限を細分化する。このうち、「国から都道府県」への配分がなくなる。これがいわゆる減反廃止だ。

 騒ぎにならない理由の1つは、都道府県レベルで独自にコメの生産計画を作ることを認めているからだ。国は調整から撤退する。だが、個々の農家がばらばらに計画を作るような世界に突入するわけではない。

 では、都道府県レベルで自治体や農協やコメの集荷業者が集まってどんな計画を作るのか。答えは「様子見」。国が一律に減産を迫ってきたこれまでのやり方の延長で、計画を作る自治体がほとんどだろう。過去の流れと切り離して計画を作る自治体も一部にはあるが、それでも大増産にはならない。コメは消費が減り続けているからだ。

 それが結論なら、減反廃止ではないではないか。そう思う人もいそうだが、必ずしもそうではない。

 日本のコメ消費が減り続けている以上、国主導で生産調整をすれば、必然的に減産になった。これに対し、今後は需要の伸びが見込める品種や地域は増産の余地が生まれる。これが、今回の制度改訂の最も重要なポイントだ。国全体でコメの生産を減らす「減反」ではなく、地域ごとにコメの需要に合わせて生産調整するというのが当面の姿だろう。

次ページ 「多収米」が焦点に