人間は経営方針を

未来の農業にどんなイメージを持っていますか。

高山:これまで、1ヘクタールの農場が隣の1ヘクタールを買収するような形で、ちょっとずつ農場が大きくなってきました。今後はもとから大規模化が念頭にあれば、もっと洗練された農場を作ることが可能です。町づくり込みの超大規模な農場で、食品加工の工場があったり、エネルギーを効率的に配給する仕組みがあったりします。

 規模のイメージは100ヘクタールです。日本の自然環境は春夏秋冬ダイナミックに変化します。大規模な農場の中で、環境の変化や植物の生育状況を誰が見ますか。人間が歩いて見て回るのはちょっときつい。ロボットなら、それを毎日完璧にこなすことができる。植物の状態を自動的にモニタリングするシステムがあってこそ、大規模な生産技術が成り立つんです。

 太陽の光や気温、湿度、二酸化炭素の濃度の毎日の変化を人間が見極め、環境調節にフィードバックできたことはありません。昨日と今日の微妙な変化を、人間は絶対見分けることができない。植物が見るからにヘンテコな状態になってから、後追いで対応しているのが実態です。ハードウエアは毎日設定を変えることができるのに、人間は変化を見逃してしまうんです。

人間の役割はどう変化しますか。

高山:植物の生育の見極めを人間がやる必要はありません。茎の1週間の伸びなら、人間が手で測ることができます。それだと、1日だけたくさん伸びただけで、あとの日は平均より伸びが少ないといった事態を見逃してしまうんです。人間が中途半端に数字をとって判断すると、見誤る。ロボットなら毎日測ることができるので、状況を正確に把握できるんです。

 では人間は何をやるのか。経営判断です。どのくらい強いアラームが鳴ったときに対応すべきかを判断し、投資を決めるんです。相当植物がおかしくならない限り、手を打たないという判断もあり得ます。最初の経営方針を決め、コストと照らし合わせ、一定の数値を入力し、システムが自動で対応する。その経営方針を決めるのは人間です。

「栽培でコンピューターの役割が増す」と話す高山弘太郎・愛媛大准教授(松山市)
「栽培でコンピューターの役割が増す」と話す高山弘太郎・愛媛大准教授(松山市)

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