ほかの分野と同様、畜産農家も高齢化で軒数が減る一方、農協以外から飼料を買っている農家も少なくない。そこで、シェアを高めるため、飼料の仕入れ先ごと農家との関係を強化したのだ。飼料の販売会社には、農協が間に入ることで代金回収にかかる人件費が減るといったメリットを提示した。

 JA邑楽館林はこれまでも、農家が飼料を配合する際の原料になる単味飼料は、全農系以外からも見積もりをとって仕入れてきた。小麦を製粉する際に発生する「ふすま」やトウモロコシ、大豆、大麦などだ。これに対し、すでにできあがった配合飼料は「成分が違うので単純比較できない」として比較を見合わせてきた。シェアを増やすため、今回この分野でも一歩踏み込んだわけだ。

「村の論理」より経済合理性で

 農業資材の価格の引き下げというテーマに関し、小泉氏は政府の規制改革推進会議とも連携しながら、全農に事業や組織の見直しで数値目標を含む年次計画を立てさせ、政府・与党が定期的にチェックするという成果を勝ち取った。それと比べ、JA邑楽館林の取り組みはどう位置づけ、評価すべきだろう。

 まず大きいのは、JA邑楽館林には農産物の販売でライバルがいたことだ。農家が野菜を直接出荷する産地市場だ。さらにかつては農協の力が弱かったため、農協の施設は使いながらも、販売はみずから手がける農家のグループがあったこともプラスに働いた。

 ひと言でいえば、「下からの変革」だ。農家は農協を利用すべきかどうかを他の選択肢とてんびんにかけ、農協は期待に応えようと努力する。その同じ文脈で、農協は全農と他の卸会社を比べ、できるだけ有利に資材を調達しようと努める。競争を背景にした緊張関係が、「1円でも安く仕入れ、1円でも高く売る」という努力を促す。

 こういう取り組みを各地に浸透させることができれば、農協の意識改革が大きく進む。そのために必要なのはライバルの存在であり、「村の論理」よりも経済合理性で動くプロ農家の集団だ。そういう環境で農協は鍛えられる。

 では小泉氏が1年余りかけて実現した改革の意義はどう考えればいいのだろう。そのことは次回のテーマにしたい。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売