自民党の農林部会長に小泉進次郎氏が就いたのが昨年10月。以来1年余り、農業改革をめぐる論議は、国際的にみて高いとされる農薬や肥料など農業資材の値段の引き下げ問題を中心に進められてきた。とくに焦点になったのが、資材の購買を手がける全国農業協同組合連合会(JA全農)の組織や事業の見直しだ。
目的はできるだけ資材を農家に安く提供し、農産物をできるだけ高く売ることにある。一連の論議の背景には、全農が期待されている役割を十分に果たしていないとの問題意識がある。
全農と非全農系から見積もりを

そのことを考えるヒントにするために、今回は邑楽館林農業協同組合(JA邑楽館林、群馬県館林市)の取り組みを紹介したい。「農家の所得を少しでも増やすため、農産物を1円でも高く売り、資材を1円でも安く提供するよう努力してきた」。江森富夫組合長はそう話す。
もし聞かれれば、農協の組合長はみんな同じように答えるかもしれない。「農家のために努力していない」と話す農協の幹部などいないだろう。だが、JA邑楽館林の取り組みには、胸を張ってそう言えるだけの裏づけがある。
全農改革に関する報道では、あたかも全農が農業資材や農産物の流通を独占し、それを傘下の農協に押しつけているかのような記事が散見された。ところが、JA邑楽館林は「全農から強制されてなどいない」と反論する。
実際、この農協は400種類を超す農薬の値段について、全農と非全農系の卸会社から毎年見積もりをとり、安いほうから買うという取り組みを長年続けている。少なくとも、JA邑楽館林に関する限り、全農が資材の購入を押しつけているという事実はない。
見積もりの結果、約6割は全農から仕入れ、残りの4割は非全農系から購入している。6割は全農のほうが安いからだ。これも、一連の報道で伝えられてきたイメージとは違うのではないだろうか。JA邑楽館林からは「4割のほうばかりが誇張されて、全農の資材は高いと批判するのはおかしい」との声がもれる。
あえて仮定すれば、双方から見積もりをとるJA邑楽館林のやり方に対応するため、全農が資材をできるだけ安く提供するよう努力している可能性はある。もしそうなら、ほかの農協も同じ方法をとればいいだけの話だ。
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