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アジア全体が食料不足という現実

日本は欧州に学べばいいのでしょうか。

平沢:ここで考えるべきなのは、日本が先進国の中でずっとお手本にしてきた欧州は、全体として食べ物が余っているという点だ。だから、食料問題をそんなに心配していない。欧州連合(EU)があるので、いざとなればお互いに融通し合うことで何とかなると思っている。

 一方、日本はすぐ目の前に北朝鮮という食料が不足している国がある。中国と韓国との関係は、EUのような緊密な関係とはほど遠い。

 一番いけないのは、アジア全体が食料不足の状態にあることだ。食料が余っている国はほとんどない。原因は、人口密度が高いことにある。アジア各国の主食であるコメは生産量が多く、それに合わせて人口が増えてきた。

 これに対し、畑作は稲作と違って連作ができないので、生産性が低かった。欧州の伝統的な農業で言えば、地力を保つために休耕や放牧が必要になる。その結果、アジアのほうが1人当たりの農地面積が狭くなった。

 だが20世紀に入り、農業が近代化され、欧米はものすごく生産力が向上した。一方、コメはもともと生産性が高いので、近代化してもそれほど収量が伸びなかった。今や欧州型の農業も、水田と単位面積当たりの生産量が同じか、むしろ向こうのほうが多いくらいだ。そしてくり返しになるが、農業は国民1人当たりの農地面積が広いほうが圧倒的に有利になる。

農業危機はどこまで深刻なのでしょう。

平沢:食料自給率は非常にいい指標で、ふだんどれだけ輸入に依存し、どれくらい国内で作っているかがはっきりわかる。一方、いざというときにどれだけ国内で生産できるのかを知ることは、万が一輸入できなくなったときのことを想定すれば重要だ。2つの指標は相互補完の関係にある。

 後者に関し、農水省は前回の基本計画で自給力という指標を公表した。あれを見ると、日本は最低限の国内生産の維持さえ難しくなっていることがわかる。80年代以降の自由化の中で、「いざとなったらコメを食べればいいじゃないか」というのが暗黙の前提になってきたが、自給力指標によると、穀物だけではすでに必要な食料を供給できなくなっている。

 一方、芋を作れば足りるという試算になっているが、仮にそれが正しいとしても、今のトレンドで生産力が落ちていくと、10年たたないうちに、芋を作っても足りなくなる。80年代から今にいたる自由化の中で想定していなかったところまで、国内の農業が縮小してしまったのだ。

 中国は死に物狂いで国内生産を維持し、食料調達を確保しようとしている。あれだけの量の食料を輸入しようと思っても、すぐにはできないからだ。日本と違い、中国ほどの規模になると絶対輸入には頼れない。

 では日本は、今の状態を未来永劫続けることができるのか。人口が1億人以上いて、自給率が40%というのはあまりに低い。しかも、周りに食料が余っている国がない。米国が深刻な不作になったら、どうするのか。日本がいつまで外貨を稼げるのかという問題もある。温暖化や気候変動で食料生産はどう変わるのか。国内の生産余力の維持が非常に重要だと思う。