間違ったら戻ればいい

人工光を使う農業に否定的な考え方は農業界にも根強くあります。

野村:仏教の世界で言えば、親鸞聖人が興した、髪の毛を生やし、妻帯を禁止しない浄土真宗ってありますね。戒律を守りたくても守れないような弱い人間、悪人と言われるような人たちに光をさしのべることができなければ、仏教の意味はない。だからこそ、修行を抜きにして、南無阿弥陀仏とさえ唱えれば救われる。それと一緒のことです。

 工場の水耕栽培を否定するのなら、野菜が育ちにくい土地、砂漠化が進んだ土地に住む人に同じことが言えますか。自分が恵まれた土地に住んでるからそういうことが言えるんじゃないですか。砂漠のど真ん中に行って、同じことを言ってくださいって話になっちゃうんです。否定から始まってしまえば、前に進むことができません。間違ったら戻ればいいんです。

 創業の1950年から受け継いでいるものは守っていかなければならない。うちであのサラダセットを出すことはありませんよ(注:醍醐プロデュースのサラダはスーパーで販売している)。でも、サラダをプロデュースしたり、いろんなことをやっていく過程で、僕自身が成長した部分を精進料理に活かしたいという部分は多々出てきます。

プランツラボラトリーにさらに望むことはなんですか。

野村:これまでの経緯からすると、湯川さんは僕の知らないことをたくさん持ってきてくれてます。日本で一切見たことのない野菜とか、どんどんこっちに投げて欲しいし、それができますかと聞いてみたいと思います。

湯川:できますよ。

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