天候不順で野菜の値段が頻繁に高騰する中、工場で育てた野菜が量と値段の両面の安定で存在感を高めている。では品質面はどうなのか。そのことを考えるため、植物工場ベンチャーのプランツラボラトリー(東京都港区)が作った野菜を使い、精進料理の高級店「醍醐」(同)がサラダセットをプロデュースしたエピソードを以前、この連載で紹介した(11月10日「今度は植物工場の八百屋が登場した」)。

 ここで肝心なのは、工場の事情を聞くことだけではなく、野菜を使う料理人の思いを知ることだろう。1950年創業の名店が工場で作った野菜を扱い、店のイメージに影響しないのか。そもそもなぜ、工場野菜を使うことにしたのか。4代目店主の野村祐介氏にインタビューした。

共通項は柔らかさ

なぜ工場野菜を使うようになったのですか。

野村:プランツラボラトリーの代表の湯川敦之さんも僕も港区の青年会議所のメンバーで、台湾のイベントに一緒に行って知り合いました。僕は野菜の料理人で、湯川さんは植物工場の経営者で、全然違う観点から野菜を見ています。僕の知らない野菜の多くの部分を教えていただきました。

 正直、安定供給に興味があったわけではありません。最近流行の、アルフォンソマンゴーやフルーツトマトなど糖度の高いものも、我々料理人は求めていません。興味があったのは、そういうことをコントロールできるかどうかです。露地ものの良さ、LEDを使い、水耕栽培で作った野菜の良さを教えてもらい、いろいろ試してみたのがとっかかりです。

どんな感想を持ちましたか。

野村:「面白いね」と思いました。しょっぱなから、かみ合ったんです。最初にいただいたのは、ヨモギです。草団子にするときの、露地ものの力強い香りは1つの魅力ですが、それは餅にして餡子と一緒にする足し算の料理の魅力です。

 一方で、天ぷらにしてちょっと塩をつけていただくと、葉脈の強いものはすっと衣だけ抜けてしまったりするんです。強すぎる香りがほかに移ってしまうといったビハインドもあります。その点、植物工場で水耕栽培で育てた野菜は葉脈が柔らかく、そういうことが起きません。

 バジルの天ぷらとか、以前はちょっと発想しなかったものを作り、お出ししたこともあります。お客様も喜んでくれました。バジルのソースのジェノベーゼみたいなものを想像すると、あまりに強すぎて和食を逸脱してしまいます。でも工場で作ったバジルは香り立ちが繊細で、これも「面白い」と思いました。共通項として柔らかさがあります。

野菜の扱いで意気投合したプランツラボラトリーの湯川敦之さん(左)と醍醐の野村祐介さん(東京都港区の「醍醐」)