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農作業でストレスが軽減する(国立市)

 透き通る晴天に恵まれた12月1日、舞台は東京都国立市にある農園「くにたちはたけんぼ」。この連載で何回か取り上げてきたイベント農園だ(2015年1月30日「『畑で婚活』も農業なのだ」)。ふだんは小学生が農作業を体験する放課後クラブや婚活、忍者体験など田畑を使った様々なイベントが開かれているが、この日はちょっと様子が違っていた。サラリーマンや主婦、学生に加え、白衣姿の人たちも参加していたのだ。

 今回のテーマは「アグリヒーリング」。農業がストレスを減らす効果について、以前この連載で紹介した(2018年1月12日「ウツを防げ!農業が分泌する『幸せホルモン』」)。順天堂大学の千葉吉史研究員によると、唾液の成分を調べることで、どれだけストレスを抱えているかを判定することができる。順天堂大はその分野で高い計測技術を持っていることで知られる。

 ジョギングなどの運動も、ストレスを減らすのに役立つ。だが心身をリフレッシュさせるのに十分な運動は、疲労感を伴うことがある。ぼーっとしていれば、ストレスはないかもしれないが、必ずしも充実感は伴わない。これに対し、適度な農作業で土や植物に触れることで、ストレスが減ると同時に、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌される。

 ここまでは、順天堂大のこれまでの研究で実証済み。ただ問題は、唾液を使う調査にいくつかの難点が伴うことにある。まず唾液を採取するキットは医療従事者しか扱うことができず、再利用をすることができない。しかも高価。高齢者などは唾液を出すことに苦痛を感じることもある。

 目標はストレスの計測技術を、企業の福利厚生などに役立つサービスとして実用化することにある。そこで、順天堂大のパートナーとして登場したのが、NTTコミュニケーションズだ。両者が知見を持ち寄り、唾液の検査技術を背景にしながらも、実際には唾液を調べることなく、ストレスを測る技術の確立を目指す。