昨年11月、農林族議員のあいだに衝撃が走った。環太平洋経済連携協定(TPP)対策を話し合う自民党の会合に出席した谷津義男元農相が「農林族のわたしをはじめみんな悪い」と語ったのだ。谷津氏も策定に関わったガット(GATT)・ウルグアイ・ラウンドの対策費のことだ。

 コメ市場の部分開放が決まった1993年のウルグアイ・ラウンド合意を受け、政府は6兆100億円という巨額の対策費を計上した。この対策はその後、農業強化とは何の関係もない温泉施設などをつくり、批判の的になった。谷津氏は自民党の会合で「大反省をしている」「今日は謝りに来た」などと話し、同じ過ちをくり返すべきではないと訴えた。

 あれから1年。政府・与党は農業の効率化に向け、全国農業協同組合連合会(JA全農)の事業の見直しなどを柱とする改革案を策定した。なぜ1年前、ウルグアイ・ラウンド対策について語ったのか。政府・与党の今回の改革案をどうみているのか。谷津氏にインタビューした。

「ああいう悪例をつくってはいけない」

なぜ昨年11月の自民党の会合でウルグアイ・ラウンド対策の失敗のことを語ったのですか。

「警鐘を鳴らさなければならないと思った」と話す谷津義男元農相

 「6兆100億円の対策費を決めたとき、農林水産省の政務次官だった。ウルグアイ・ラウンド合意で海外の農産物が相当安く日本に入ってくる可能性があるということで、農業を強くするための予算のはずだった。ところが、そうじゃないほうにかなりのお金が行った」

 「農家のなかに入ってみるとよくわかるが、補助金が出ることを前提に考えている。農協なんかも『こういうやり方をすれば補助金が出ますよ』と指導する。自分たちで生産して高く売って所得を上げることより、補助金をもらうことを前提に考える。6兆100億円のあと、そういう空気ができてしまった」

 「ウルグアイ・ラウンド対策のような悪例をつくってはいけない。頭のなかにそのことがこびりついて、ものすごい重しになっていた。ところがTPPでまた同じことをくり返しそうな空気になったから、警鐘を鳴らさなければならないと思った。『こういう失敗をした。反省しているんだ』ということを言った。TPP対策をするなら、本当に競争力のある農業にしたり、農家の所得を上げたりすることに特化すべきで、ほかには使うなということを言いたかった」