「まずいコメのことはわかりますよ。でも、どれがおいしいかとなると、なかなか難しい。だから、可視化にこだわったんです。世の中の人は脳で食べ物を食べてると思ってます。器が変わると、味も変わる。パッケージで感じる味も変わってくる。点数や表彰は大事なんです」

 これは、点数を振りかざし、虚構のブランドを作ろうという意味ではない。そうではなく、点数を手がかりにして、消費者をおいしいコメに導くことが目的だ。「ぼくは正直わからない」という言い方は、栽培を自在にコントロールできる農家への信頼の裏返しでもある。だからシンプルに「一番おいしいコメをください」とだけ生産者に伝える。

そこは平等に

 高橋氏のこういう発想の背景には、自ら鳥取県の農業法人でコメを生産していることがある。「こだわってコメを作って来ましたが、有名な産地と比べると評価されない。同じように頑張っているのに評価されない人がいるんだろうと思いました」。点数をパッケージに大書するのも、シェフとコラボするのも、「頑張っている農家」のコメをブランド化するのが目的だ。

 ちなみに、高橋氏の農業法人も毎年、食味コンクールに挑戦しているが、「点数は悪くないんですが、残念ながら、まだ表彰には至っていません」。本社の商品棚で見せてもらおうとすると、「ここにはありません」。

 「自分たちのコメを優先的に売りたいですが、それをやっちゃうとアレなんで、そこは平等にやってます」。

 何気なく聞こえて、努力して競争を勝ち抜く農家へのリスペクトを感じさせる高橋氏の一言だった。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売