カリスマシェフとベテラン農家のコラボによる「匠ブレンド米」はこうやって商品化した。ではなぜ、高橋氏はコメを作る農家ではなく、コメを使う側のシェフをクローズアップするブランドを作ろうとしたのか。きっかけは「アップファームは海外展開をどう考えているのか」と聞かれたことだという。高橋氏は「今は考えてません」と答えながら、どうすれば海外でも通用できるブランドを作れるかを考えた。

なぜシェフか

 「自社ブランドの米風土も、新潟の魚沼産も海外にどうやって出したらいいのかイメージしにくい。でも、大阪で有名なレストランに行くと、たくさんの訪日客でにぎわっている。料理人の名前のほうがわかりやすい」

 コメのブランド化についての1つの考え方だろう。稲作に特別詳しい人なら、各地の匠の農家の名前を挙げ、彼らが作るコメの特色を説明することができるかもしれない。だが、消費者に幅広く個々の生産者を認知してもらうことには限界がある。米風土でそれに挑戦しているアップファームだが、海外にまで視野を広げると、カリスマシェフという「助っ人」を仲間に入れるべきだと考えた。翻ってこれは、国内市場の攻略でも通用する戦略だ。

 今回の取材では、「八十二」や「八十七」など、食味コンクールで使う食味計の検査結果をブランドの全面に出している意味についても、改めて質問した。それに対する高橋氏の答えは、一見、変化球のように見えた。

 「僕らが産地に行くと、『この田んぼのコメは点数は高いけど、すかすかだ。こっちで作ってるコメのほうがうまい』と言われることがあります。点数とコメの味がずれているんです」