肥料や農薬や田植え機の値段に注文をつけることは、圧倒的な発信力を誇る政治家の着目点としてはあまりにマニアックに見えた。だが、論議が進む中で巨大な標的が浮かびあがった。農家との間に立ち、資材流通を担っているのは農協であり、その上部組織は全農。資材価格を突破口に、全農に幅広い分野で改革を迫ったのが小泉改革の本質だった。

政治と民間の線引き

 木徳神糧との提携にいたるコメ流通の改革はその成果の1つ。一方で論議の出発点にあった資材問題に話を戻せば、政治調整が必要な全農改革と違い、役所が主導して粛々と進めることのできるテーマもあった。それがアグミルだ。アグミルを運営しているのは民間企業のソフトバンク・テクノロジーだが、システムの立ち上げは農林水産省が補助金で支援した。

 全農改革とアグミルで重要なのは、政治による支援や要求と民間のビジネス活動との線引きだ。全農改革は表向き小泉氏が背中を押したが、その先は民間の立場の全農が競争の中で自ら実現すべき仕事だ。

 同じようにアグミルも、システムの開発は補助金で支援したが、いかに使い勝手のいいサービスにしていくかは今後の課題になる。その意味で、触れておくべき一点がある。アグミルは、匿名による登録を認めているのだ。

 資材の値段やアフターサービスの中身で突っ込んだやり取りするうえで、匿名性は当然ながら障害になる。まず資材を売る側からすれば、様々な情報を開示しても、やり取りをしている相手が十分に支払い能力のある農家かどうかがわからない。農家の立場にたてば、資材の販売会社が信頼できる相手かどうかわからないとも言えるが、これは大きな問題ではない。匿名を希望している登録者のほとんどが買う側の農家だからだ。