この連載をずっとやってきて、少しだけ気になっていたことがある。紹介する農家の言葉が、ときに「やらせ」や「サクラ」と読者に受け止められはしないかということだ。今回は、会社員や官僚とはどこか違う、農家のメンタリティーについて考えてみたいと思う。

 例えば、農家に新しいシステムやサービスを提供する企業を取り上げるとき、極力、関係する農家を併せて取材するようにしている。農家の評価を聞いてみないと、システムが本当に役に立つものかどうかわからないからだ。

 そうはいっても、システムやサービスを利用している農家は、往々にして当該企業から紹介される形で取材することになる。そうなると当然、客観性を目的としながらも、紹介によるバイアスの懸念がつきまとう。ポジティブな記事を期待する企業の意図と無関係ではいられないからだ。

 結論から言えば、そうした懸念はたいてい杞憂(きゆう)に終わる。例えば、東証1部上場企業のセラクが農家向けに提供しているサービスを取材したときもそうだった。セラクが紹介してくれたのは、神奈川県藤沢市でトマトやキュウリ、コメなどを栽培している渋谷秀夫さんだ。

セラクのシステムの使い勝手が向上したと話す渋谷秀夫さん(神奈川県藤沢市)

 セラクが提供している農作業の支援サービスにはいくつか種類がある。1つは遠隔モニタリングシステムの「みどりクラウド」。温室内にセンサーを設置し、温度や湿度、日照量、二酸化炭素(CO2)、土壌水分などの栽培環境を自動で計測するシステムだ。データはクラウドに送信され、農家はグラフなどの見やすい形でスマホやタブレットで確認することができる。