2年かけて自動化のプログラム開発

 サイボウズはこの一連の作業の自動化を目指し、実質2年間かけてプログラムを開発した。農協職員の判断材料をもとに、「遠い市場から配車を決める」「出荷量の多い出荷所から先に取りに行く」などをプログラムのルールとして取り入れ、「農家から集まってくる野菜の量」や「各市場に運ぶ量」などを入力し、配車計画をパソコンで決める仕組みを作成した。

サイボウズが開発した配車システムをこれから試行する(8月31日、三浦市農協)

 プログラムを本格的に試行したのが8月31日。その瞬間を取材するために同日、三浦市農協を訪れた。職員の1人が、パソコンの画面に「自動作成」と書かれた文字にカーソルを合わせた。「押すよ、いいの?」「終わりました」「時間出てますね」。職員たちのそんなやり取りを聞きながら、画面をのぞき込むと、「作成完了!」と書かれた下に表示された作業時間は「0.060秒」。あまりのあっけなさに職員たちはただ笑顔を見合わせた。

「作成完了!」で所要時間は「0・060秒」(8月31日、三浦市農協)

 この日の試行は配車するトラックの台数がそれほど多くなかったので、100台が走るピーク時にもこれほど短い時間で「作業完了!」となるかどうかはわからない。だがたとえ盛期でも、圧倒的な短時間で作業が終わるのは確かだろう。システムの運用が軌道に乗れば、担当者の仕事量が劇的に減る。

 ただし、これはゴールではなく、スタートラインと考えるべきだ。職員によって配車の効率に差が出るように、プログラムがはじき出した答えが最適とは限らないからだ。そこで、「機械のほうが正しい」とは決めつけず、プログラムが瞬時に出した配車計画を、スタッフがその都度、画面上で修正する。人の立場で考えると、「これだけの量をこのルートで運ぶのは運転手がかなりきつい」などと判断する可能性があるからだ。

 サイボウズのスタッフによると、「まずは人の判断に寄せる」。そして両者の違いをAIを使ってプログラムに学習させ、差が縮まるように補正する。その作業が順調に進み、人が見て「問題なし」と感じるようになれば、とりあえずの完成形だ。出荷がヤマ場を迎える冬にそこまで持っていくことを目指す。

 そこまでたどり着くことができれば、プログラムの活用が劇的にスタッフの作業を軽減する道がいよいよ見えてくる。「急な雨で出荷を見合わせることもある」と先に書いた。その結果、前日の夜10時に作っておいた配車計画を、夜が明けたら大きく見直すことが必要になる可能性がある。だがもし、プログラムが1秒で作った計画が、ほぼそのまま使えるようになれば、状況は一変する。当日の朝に「自動作成」をクリックすればすむようになるからだ。

配車計画が画面に表示される(8月31日、三浦市農協)