農協のベテラン職員が長年の経験を頼りに半日がかりでこなしていた仕事が、コンピュータープログラムを使うことで、わずか1秒以内で処理できるようになるかもしれない――。今回はそんな例を紹介したい。心配なのは、農業だから、あるいは農協だから、これまで手のかかることをしていたと思われてしまうことなのだが、誤解を恐れず話を続けよう。

 三浦市農業協同組合(神奈川県三浦市)がIT企業のサイボウズと組み、全国の市場に農産物を運ぶ配車の手配のシステム化に取り組んでいる。取材を通して浮かびあがってきたのは、天候に左右され、生き物を相手にする農業の難しさだ。克服するには、人工知能(AI)の活用が視野に入る。

 まず始めに、人手を使って現在、どうやって配車を手配しているのかを概観してみよう。最初に動くのは農家だ。市内の各所にある農協の事業所に、農家がそれぞれ翌日何をどれだけ出荷したいかを連絡する。連絡方法はファクスや電話、メールなど様々。事業所はそれをパソコンに入力し、本部に送信する。これが午後1時ごろ。本部はこれを受け、翌日の出荷量を集計。結果を各事業所にファクスで戻し、ミスがないかどうかを確認してもらう。

 この間の作業にパソコン送信だけでなく、電話やファクスが混在していることを「非効率」と指摘することは控えたい。電子化されていないからと言ってこの段階で作業が滞ることはまずないし、高齢者も少なくない農家のすべてにパソコンの利用を求めることの費用対効果はそれほど大きくないからだ。

 次に、本部のスタッフは集計結果をもとに翌日、どの野菜をどの市場に運ぶべきかを考える。判断材料は、野菜の値段と各市場の販売数量の2つ。ある市場の大根の値段がほかより高くても、販売量が少なければ必ずしも有利な売り先にはならない。この2つのバランスを取りながら、野菜ごとに出荷先を決定する。この作業が1~2時間。午後3時ごろに終わる。

 難しいのはこの先だ。出荷計画が決まったことを受け、次に運送会社のトラックにどの出荷所でどの野菜をどれだけ積み込み、どの市場に向かってもらうかを考える。そう書くと、「そんな単純なことがなぜ難題?」と思うかもしれないので、ここで数字を挙げて配車の手配の仕方を説明しよう。