山崎氏のコメは「道の駅しょうなん」の棚の“一等地”にあった(千葉県柏市)

もっと遊び心も加えながら

 「KSASの特徴は、農作業の全体を包み込むようにカバーしている点にある」と冒頭に書いた。だが、それはシステムが経営を包み込み、画一的な経営になるという意味ではない。経営者が自社の戦略に照らし、システムのどの部分にフォーカスして活用するかを決める。

 KSASを導入した農家がクボタに寄せた声を見ると、「急な稲刈りに対応できる」「ノウハウを後継者に伝える」「機械を長く大切に使いたい」「作業日誌を有機JASの認証に利用する」など様々だ。山崎氏のほかにも、「おいしい農作物を作りたい」と意欲を燃やす農家は当然いる。もっと遊び心も加えながら、システムの独自の使い方を考えることもあっていいだろう。

 高齢農家の急激な引退という構造変化で、農業経営が「勘と経験」から脱却して情報化するのは将来の目標ではなく、避けて通れない足元の課題になった。だが、その道筋は農家によって多種多様。かつて篤農家と呼ばれた人たちも最近の先進農家も、自分で工夫して新たな道具を作ったり、道具の使い方を考案したりするのが好きな人が少なくない。そういう一面が、KSASという「現代の道具」への取材で垣間見えたことも興味深かった。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売