現在、農林水産省と自治体のバックアップで、43府県で実証実験を行っている。稲作をやっているほぼすべての地域をカバーしていると言っていい。データが蓄積されれば、見回り回数の削減というコスト節減だけでなく、農作業の標準化への道も開ける。大規模化が進む農場で、新人のスタッフのミスを減らすためのツールにもなり得る。

 農業のICT化の課題の1つが、センサーなどの機器の購入費と運営費の負担の重さにある。そこで、秋田県の広大な干拓地、大潟村では1本の通信回線に50本のセンサーの情報を集約し、通信費の負担を抑えるための試験を始めている。ドコモの担当者は「50枚売れるはずのSIMカードが1枚しか売れなくなるが、50カ所の農場に売れればいい」と話す。

一からではなく、ベンチャーと組む

 ここまでがドコモの農業ビジネスの概要。さらに指摘すべきなのは、ドコモがサービスを一から立ち上げようとはしていない点だ。分娩間近の牛の情報を携帯に伝える牛温恵は、ベンチャー企業のリモート(大分県別府市)が作ったシステム。水田センサーのPaddyWatchはIT企業のベジタリア(東京・渋谷)が開発した。農業分野で特色のある技術やノウハウを持つベンチャー企業と組み、サービスを展開するのがドコモの戦略だ。

 これは、企業が自らの強みを活かした農業ビジネスの新しい形を示す。ドコモがやっているのは農場を自ら開いて農産物を作ることでも、農業関連の個々のサービスを生み出すことでもない。農業ベンチャーが開発したサービスを、農家に届けるためのインフラを提供することに特化しているのだ。