きっかけは2014年暮れから2015年はじめにかけての天候不順だ。大雪やひょうでサンチュがまともに育たず、牛繁に野菜を販売している卸会社は社員が産地を訪ね、休日返上で集荷に追われた。それでも集まったのはサイズが小さいものばかり。牛繁は売る量を制限するなどの対応を迫られた。

慣行を破り、価格を抑える

 そこで浮上したのが、植物工場から仕入れるというアイデアだった。それまでこの卸会社は「植物工場の野菜は高くて扱えない」というスタンスだったが、このときの経験で「あんな苦労はもうしたくない」という思いが高まっていた。卸にとっても、外食にとっても、売るものがないという事態は致命的だ。異常気象で野菜の成育が不安定になることも頻繁に起きており、両者は「トライしてみよう」ということで一致した。

 JA東西しらかわの情報は、牛繁の高田昌一社長の知人のコンサルタントを通して入ってきた。原発事故による風評被害を克服するため、2013年12月に完成させた植物工場だ。サンプルを取り寄せると、味にえぐみがなく、しかも葉が軟らかい。焼き肉の味を損なわず、肉を巻きやすいことが分かった。ちなみに、暴飲暴食で味覚がマヒしている筆者が食べても、一般のサンチュと比べて味の違いは歴然としていた。

 問題は価格だ。結論から言えば、牛繁がこれまで仕入れていたものとほぼ同じ水準にすることができた。以前は、芯を切り、同じ大きさの葉をきれいにそろえ、パックに入れたものを買っていた。それが既存の流通の慣行だったからだ。これに対し、植物工場のサンチュは株のまま仕入れ、店舗で芯を切る方式に改めることで、仕入れ値を抑えた。

 そもそも外食店で扱う葉ものは、形や大きさがきっちりそろっている必要はない。店舗で芯を切るのもごく簡単な作業。菌数を調べたところ、食品衛生法の基準値以下だったため、水で洗う手間を省くこともできた。以前のサンチュは泥や虫を洗い落とす必要があった。この作業がばかにならず、しかも水洗いで鮮度が落ちる弊害もあった。

店舗でカットすることで仕入れ値を抑えた。
店舗でカットすることで仕入れ値を抑えた。

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